■1 賞与の支給日在籍要件とは?
文言の通りでして、賞与支給日に、従業員として在籍していなければ賞与は支給しない、というものです。
私の就業規則のひな型がベースでしたらそのようになっていますが、その他のひな型をベースにされている場合、念のためご確認ください。
よほど古いひな型でない限り、支給日在籍要件の規定はあると思いますが。
■2 私のひな型でも要注意事項はある
よくあるお話しですが、退職前の有休フル消化中の扱いです。
当然、有休消化中は在籍していますので、支給日在籍要件があっても、他の在籍者と同じように扱うべきです。
皆と同じように賞与査定をし、査定の結果、支給すべき人であれば、退職前の有休フル消化中でも支給すべきです。
これを、有休フル消化で1か月以上出勤していないから支給しないという扱いにしますと、軽い順に、労基署<ユニオン<ユニオン+弁護士のタッグ、のどこに相談されてもおかしくありません。
※有休取得に対する不利益取り扱いは、労基法で禁じられております。
■3 では定年退職後は?
この点が裁判になった事案として、カツデン事件(東京地判平8.10.29)があります。
ガッテンではありません、カツデンです(私の脳は最初、ガッテンと認識しました…)。
※労働事件名は、「会社名+事件」という名称がつけられるのが一般的で、カツデンという会社の事件です。
結論から申しますと、定年退職者に対する賞与の支給日在籍要件は有効との裁判所の判断でした。
つまり、会社が定年退職者に、支給日在籍要件に基づいて賞与を支給しなかったことについて、裁判所はOKを出したわけです。
■4 しかし、学説では批判も
カツデン事件について、定年退職者は退職時期を自ら選択できないにもかかわらず、賞与の支給日在籍要件を適用するのは、いかがなものか、という批判です。
この学説は、労働法専門の弁護士や裁判官が実務で参考にしている、労働法の権威の学者のものです。
ですので、もし定年退職者に支給日在籍要件に基づいて賞与を支給しないというケースが出た場合は、当該退職者に対して十分に説明をするのが良いと思います。
もしもですが、本気の裁判になって東京地裁で争った場合、上記学説に沿った判決が今後出るかもしれません。
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