top of page

どうなの?欠勤常習者の残業単価って!

更新日:2022年6月23日

■1 残業単価の計算式(月給制の場合)

基本給や諸手当(通勤手当等の法令で限定された手当は除外可)を分子に、月平均の所定労働時間「(1年間の歴日数―所定休日数)×1日の所定労働時間÷12か月」を分母にし、算出します。


■2 では、欠勤常習犯は?

完全月給制(遅刻しようが欠勤しようが賃金控除しない)ではなく、就業規則にノーワークノーペイの賃金控除する旨を規定している「月給制」が一般的です。

ですので、所定労働日の1/3を欠勤するような凄い常習犯なら、基本給なども1/3減ることになります。

ここで、私だけかもしれませんが、疑問がわきます。

この欠勤常習犯の残業単価の計算式において、分子は、1/3欠勤控除後の金額なのか、それとも違うのか、という点です。

この論点についてご質問をいただいたことがないものですから、調べてみました。


■3 リサーチの結果

私の疑問に対する、明確な法令上の文言は見当たりませんでした。

労働基準法施行規則第19条に「月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額」とあり、上記■1の規定だけはあります。

これ以上の規定はなく、欠勤者の取り扱いについての具体的文言はないのです。


■4 行政解釈は?

結論としては、欠勤常習犯の残業単価も、無遅刻無欠勤者の残業単価も、その計算方法は同じ、ということでした。

行政解釈としては、「欠勤控除した金額で残業単価を出してはダメですよ、根拠は労働基準法施行規則第19条ですよ、もし控除した金額で計算した残業代しか払っていなければ労基法違反になりますよ」とのことです。


■5 極端なお話し

「1か月間で1日だけ出勤し9時間の実労働、その他は無断欠勤で退職」した場合、残業単価は無遅刻無欠勤者と同じように計算し、少なくとも1時間分の残業代を支払わないと、労基法違反ということになる…。

なんとも…という感じですが…。

仕事のできる人とできない人の残業単価が同じであるのと同様、遅刻者、欠勤者であっても、残業単価の算出は同じになってしまいます。


余談ですが、皆勤手当や無事故手当が支給されない月の残業単価はどうなるのか?といいますと、当該手当不支給の場合は当該月の残業単価がさがっても問題ないというのが私の見解です。

※これらの手当は、確実に支払われる手当ではなく、条件を満たしたときに初めて支払われるものであることからしますと、支払われたときは残業単価に入れ、支払われないときは残業単価に入れないという考え方が妥当だと思います。


■6 ちなみに、なぜ労働時間は1分単位か?

こちらは、更にと言っていいかもしれませんが、法令上の根拠規定はありません。

近しいところで、割増賃金の計算において端数処理をする場合、「その月の残業時間の30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げでもいいですよ」という通達レベルの文言があるにすぎません。

労基法では労働時間を1分単位でみる、という根拠条文はないのですが、実労働時間主義を労基法はとっていますので、「1分単位です」ということになります。


大手ファミリーレストランが、これまで5分単位で計算していたパートやアルバイトの勤務時間を、7月から1分単位に変更するそうです。

メディアにも出ていましたが、5分と1分で揉めていました。

若いアルバイトの方が、よく耳にする合同労組(ユニオン)に加入して、この問題に発展したようです。

最新記事

すべて表示

■1 退職証明書とは? 実は、労基法に規定がありまして、ちょっと長いですが、条文をそのままご紹介します。 赤文字部分は、要注意点です。 <労働基準法第22条(退職時等の証明)> 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなけれ

■1 名古屋自動車学校事件とはそもそもどんな事件か 簡潔に申しますと、定年後再雇用者である自動車教習所の教官が、仕事の内容が同じ(自動車教習)なのに、定年後の再雇用契約で基本給と賞与が減額されたのは旧労働契約法20条違反であり、定年退職時との賃金の差額支払いを求めて提訴した事件です。 1審の名古屋地裁では、定年退職時の6割を下回る差額は違法、という「根拠が謎の6割基準」が出て、私の業界はざわつきま

■1 令和6年4月1日からの労働基準法施行規則改正の概要 厚生労働省パンフ「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」から引用 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080267.pdf 【追加の明示事項と明示のタイミング】 1. 就業場所・業務の変更の範囲 → 全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時 2. 更新上限(

bottom of page