■1 事案の設例
A部署の責任者をしていた社員Bさんが産休・育休をとっており、来月から復帰予定となってきた。
Bさんのポストは、すでに他の方が就任しており、空きがない。
来月、Bさんが復帰した際に、基本給等は維持したまま、部下なしの新設ポストを設け、簡易なルーティン業務をやってもらおうと考えているが、問題はあるか?
■2 育児介護休業法での不利益取扱の禁止と原職復帰への配慮
育児介護休業法10条では、労働者が育児休業を取得したことを理由とした不利益取扱の禁止を定めています。
もし、この条文どおりの事案であれば、当該不利益取扱は無効になります。
また、育児介護休業法の指針では、「原則として原職又は原職相当職に復帰させるよう配慮する」必要があるとしています。
■3 行政解釈では判断できない悩ましい事案はどうなるのか?
中小企業における上記■1の設例のケースは、まさにかなり悩ましい事案になります。
行政解釈は、法律条文・指針・通達などで判断せざるを得なく、判断しづらいもの(中小企業はこの部類が多いかと)は、司法判断にゆだねられるという回答が多くなるように思います。
私見ですが、明らかに〇か×でない事案(設例のような事案)では、大企業では違法性が高くなり、企業規模が小さくなればなるほど、大企業よりは違法性が低くなるように思います。
■4 悩ましい事案の裁判例はあるのか?
最近では、クレジットカード会社の事件がありまして、新設部門の部下なしポストに配転し、電話営業などを担当させたのは、労働者のキャリア形成を損なうもので、業務上の必要性も高いとは言えず、違法と判断しております。
■5 では、どうすれば良いのか?
企業規模が大きくなればなるほど、上記の違法性リスクは高くなると思いますので、ここは、極めてシンプルですが、まずはご本人とよく話し合っていただき、双方納得のうえでの職場復帰がベターだと思います。
話し合い当初には、双方の乖離があるかもしれませんが、何回かお互いの考えや事情などを確認しあいながら、折り合いの付けられる内容を探っていくのが、大事だと思います。
そして、双方OKとなれば、その合意内容は必ず書面で双方取り交わし、所持すべきだと思います。
結構リスキーなのは、「●さんは育児も大変だろうし、きっと会社の意向を受け入れてくれるはず」という会社だけの判断です。
悪気も何もないケースが圧倒的に多いのですが、このような思い込みから、トラブルに発展するケースが多いため、原始的でシンプルですが、「よく話し合う」というのがベターです。
これは、労務管理全てにおいていえる事です。
※話し合いを重ねた事実が、法的にも配転の適法性を高める事情になるかと思います。
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