■1 不正行為の疑いが生じた場合の初期対応
不正行為の疑いがある従業員(以下、「本人」とします)に察知されないよう、以下を行ってください。
まずは、客観的証拠を確実に保全してください。
動かぬ証拠です。
※会社の動きを察知されると、証拠隠滅リスクがありますので、迅速に保全してください。
そして、その証拠の裏付け調査をしてください。
一番多いケースは、周りの従業員へのヒアリングなどでしょうか。
他の不正行為も発覚するかもしれません。
証言をしたことによる本人からの攻撃も十分考えられますので、ヒアリングには十分な配慮と注意が必要です。
■2 いきなり本人に不正行為しただろうと聞かない
上記■1で保全した客観的証拠と裏付け調査(刑事ドラマとほぼ同じです)を基に、本人と面談します。
私なら、不正行為の事実関係を認めるかどうか、まずは本人の話を聞いてみます。
そして、認めても認めなくても、動かぬ客観的証拠を本人に提示して、不正行為の事実関係を確定させます。
認めなかった場合は、動かぬ証拠と、他の従業員からの証言(本人が証言者を特定できないようにする必要が基本的にあり)をそろえて、本人にもう一度話を聞いてみます。
■3 一人でやらず録音はすべき
このような話し合いは、絶対に一人で行わないでください。
また、秘密録音ではなく、「話の内容を正しく記録するために録音をします。あなたも後日聞きたいということであれば、いつでもお聞かせいたします」と前置きしてから録音します。
※録音データは会社だけが保持してください。
※しかし、本人も秘密録音している可能性は高いですが。
これらの手法も、刑事ドラマとほぼ同じプロセスです。
■4 弁明の機会の付与
私の就業規則のひな型では、弁明の機会は「諭旨解雇と懲戒解雇」にだけ明記していますが、不正行為に対する懲戒処分がこの二つに該当しなくとも、現時点の私は、弁明の機会は与えた方が良いと考えています。
ただし、弁明の機会付与の記述自体はそのままの方が柔軟かと思いますので、変更はしなくても良いと考えています。
けん責ですむような軽い事案であれば顛末書の提出や話し合いの場をもって、弁明の機会を与えたと解して「けん責」の懲戒処分をしても、のちに問題になることは考えにくいですが、例えば出勤停止などであれば、弁明の機会を与えた方が良いです。
理由は、このような従業員は解雇を検討せざるを得ない場面が多くなってきますので、もし解雇で勝負する場合に、弁明の機会付与は解雇の有効性を高めると考えるからです。
少なくとも、弁明の機会を与えずに懲戒処分をするよりは、解雇の有効性を高める要素となると考えています。
■5 就業規則に基づいた懲戒処分の検討
懲戒処分は、その懲戒事由が就業規則に記載されていなければなりません。
就業規則がない、または事案に対応する懲戒事由が記載されていなければ、懲戒処分はできません。
※刑事罰と同じ理屈で、●をしたら●という処分を受ける、と書かないと、懲戒処分ができないのです。
ですので、就業規則がない小さい会社の場合は、懲戒処分ができません。
事案に対応する懲戒事由を列挙しますと、キリがありませんので、「前各号に準ずる程度の行為を行ったとき」のような包括的な文言があると便利です。
この包括条項で、いろんな事案へのあてはめができますので便利です。
■6 不正行為は絶対見逃さない
不正をしてもおとがめなしなら、おかしな雰囲気の会社になってしまいますので、絶対に避けるべきです。
信賞必罰でやるべきです。
まじめで有能な従業員さんが適正報われて、能力があっても不正をするような人は適切に処分すべきです。
温情で許してしまうことは、決して本人のためにならないと私は考えます。
以前の記事の「性弱説」にもリンクしますが、弱さを出させない、弱さを正していく、ということは、労務管理上大変重要だと思います。
Comments