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「2023年4月から始まる残業代1.5割増」について思うこと

更新日:2022年10月18日

今回は、今年の夏ごろからご相談をいだたくことが多くなってきた論点である「『2023年4月から始まる残業代1.5割増』について思うこと」と題して述べたいと思います。

残業がほとんどない会社様には関係のない論点ですが、実労働時間管理の厳格運用は必ずなさってください。

なぜならば、労働基準法は実労働時間に対して賃金を支払わなければならないからです。

働きぶりや貢献度等ありきではなく、「実労働時間」に対して賃金を払うというのが現実です。

※働きぶりや貢献度等は、ボーナス査定に反映させるのが一番シンプルで、次に昇給や昇格に反映させていくのが良いと思います。


■1 ひっそりと始まる中小企業の残業代1.5割増

大企業ではすでに適用済みの「法定労働時間外60時間超の割増賃金率1.5」ですが、いよいよ中小企業にも来年2023年4月から適用になります。

中小企業への適用猶予が長かったため、ひっそり始まる感がありますが、もう残り半年余りとなりましたので、長時間労働がどうしても発生する企業では、待ったなしです。


法改正により賃金請求権の時効がとりあえず3年(そのうち5年)、そして1.25割増の対象時間である「法定労働時間外」が60時間超となりますと、1.5割増となるわけですから、あとは、電卓をたたいていただければと思います。

今後、さらに弁護士等による未払い残業代請求の件数が増えるのは、確実だと思います。

ですので、長時間労働が多く残業代の支払いをしていない場合、極めて深刻になる可能性が日に日に増していきます。


※弁護士の場合は個別に請求してくるケースが多いですが、労基署に入られて、法律ギリギリまで遡って従業員全員に未払い残業代を支払いなさいと是正勧告をうけた場合、極めて深刻になると思います。


■2 ちなみに自動車運転者の適用猶予も2024年4月から廃止

現時点では、労働基準法の残業時間の上限規制が適用猶予となっている自動車運転者も、2024年4月から独自ルールが適用され、自動車運転者独特の改善基準告示というものの見直しも含め、厚生労働省で検討がなされています。

(引用:厚生労働省HP 令和4年9月8日付)


■3 対応策は何か?

一番は、とにかく、実労働時間をなるべく厳格に把握することです。

これをかなりの高精度でできている企業は、まだまだ多数派ではありません。

しかし、今は、勤怠アプリ等の様々なツールがありますので、絶対に取り組むべき事項です。

中小企業においては、オーナー社長が絶対やると決めないと、なかなか前に進まないことがありますが、もう待ったなしですから、実労働時間(=賃金支払いの法的義務)の把握は、とにかく、1日も早く取り組んでいただきたいです。


その他の裏技的な手法は、残念ながらありません。

法律に対して真正面から対応できる方策があれば、「会社を守る経営者側社労士」と名乗っている私がご提案しないはずがありません。

ネット記事などで裏技的な情報がでているかもしれませんが、法の潜脱的手法と評価される可能性が極めて高いと私は認識しており、「労基署リスク、弁護士関与リスク、労働組合リスク、最悪のパターンである『労働組合+弁護士+訴訟の三点セットリスク』」を踏まえたものではないと思っています。

何か労務問題が発生したとき、金銭的支払いを含め、全責任を負うのは会社であり経営者です。

ですので、はじめの一歩であり極めて重要な「実労働時間をなるべく厳格に把握」していただきたいのです。

このことが、労務の分野において、会社と経営者を守ることにつながります。

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