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退職願と退職届の違いと会社の対応

「退職願と退職届の違いと会社の対応」と題して述べたいと思います。

法的性質には諸説あるのですが、実務では両者の違いはほとんどなく、あまり気にされることではありません。

ただ、ご存じないよりはご認識いただいたうえで、退職の手続きを確実に行っていただく方が良いです。

そのため、諸説あるなかの多数派だと思われる説を基に、私なりに述べていきたいと思います。


■1 退職願の一つの解釈

字の通りですが、労働者からの退職のお願いであって、辞職の申し出ではないという考え方です。

ただのお願いであり、退職希望を会社に伝えたのみで、正式な辞職の申し出ではないから、いつでも自由に撤回できるという考え方につながります。


■2 辞職とは?

辞職とは、労働者からの一方的意思表示により労働契約を終了させることをいいます。

民法で担保されたもので、解約の申し入れ日から2週間経過すれば、労働者は会社を退職できます。

言い方を変えますと、辞職は、確実に退職することが前提であるともいえます。

※会社としての解約(解雇)の申し入れもできますが、労働契約法により解雇が規制されており、労働者は退職自由、会社は解雇不自由となっております。


■3 退職届とは?

退職届の意味合いは、労働者から会社への一方的意思表示である辞職とほぼ同様だと考えることができます。

しかし、言い方によっては、退職のお願いの意味合いで提出したのだから、撤回することができる、とも考えられます。


■4 退職願は辞職の意味合いなのか?

では、退職願が提出された場合は、辞職なのかそうでないのか、という議論があり、■1の考え方が出てくるのです。

つまり、退職願だけを会社が受け取って何もしなかった場合、いつでも退職を撤回され、やっと辞めてくれるとホッとしたのもつかの間、ということになってしまうことがあります。

このようなことを防ぐため、まとめで防止策を述べます。


■5 退職願のよくあるご質問

いろんな就業規則のひな型に出てくるフレーズで、「退職を希望する従業員は少なくとも退職希望日の30日前には退職願を会社に提出するとともに、その承諾を得ること」という趣旨の規定があります。

「この30日前ルールに法的拘束力があるのか?」というご質問を結構お受けしますが、結論としては、法的拘束力はありません。


会社としては、「引継ぎ等もあるので、せめて30日前には言ってね。社会人として常識だよね」というお気持ちを規定化されるのが大多数ですが、30日前ルールを労働者が守らなくても、法的には、2週間経過で確実に会社を辞めることができます。

しかも、「明日から有休をフルに消化して、消化しきったと同時に退職します」というパターンが非常に多いですが、残念ながら、会社としては、法的根拠に基づいた対抗策は、ほぼありません。

強引な手法を紹介する記事もネット上では散見されますが、辞めると決めた労働者に求めるのは、極めて属人的な業務引継ぎぐらいと思っていただき、「去る者追わず」がいいと個人的には思っています。

(辞めるのを邪魔されたとして、腹いせに会社が反撃を受けるのもどうかと思います。)


■6 退職願と退職届の違い

個人的な意見ですが、退職届は辞職に近く、退職願はただの希望、と整理しています。

しかし、上記で述べたような辞職なのかそうでないのかなど、実務上の法的線引きは難しいため、どちらが出てきても、次のまとめで述べる承諾書を発行して、退職日を確定させるのが良いです。

これは問題社員の場合は効果抜群で、よほどのこと(会社の不手際等)がない限り、退職を撤回できません。


■7 まとめ

「退職届」or「退職願」が問題社員から出てきましたら、即刻、「承諾書」の原本を発行してください。


内容としては、「令和●年●月●日付貴殿発当社宛退職届記載のとおり貴殿が令和●年●月●日付で当社を退職されることを、当社として承諾いたします。」という旨の簡単な書類です。

※退職願が出てきた場合、退職届の記載を退職願に要変更です。


面談中であれば、会社印を押印後の原本を封筒にいれずにそのまま手渡しし、郵送の場合は特定記録郵便で出すのがベターです。

上記のコピーを、「退職届」or「退職願」の原本とともに会社保管です。


最後に、問題社員でなければ、「退職届」or「退職願」で揉めることもなければ、退職を撤回してくることもほぼ考えにくいですが、私は上記の承諾書は、退職手続きのルーティンワークにしていただくのが良いといつも思っています。




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