top of page

懲戒処分実施後の賞与減額はできるのか?

更新日:2023年11月24日

■1 賞与減額の何が問題か?(論点の明確化のため、あえて「減額」を使用)

私の社労士人生の中で、一度だけ見たことがある賞与規定があります。

それは、「1回の賞与は、基本給の2か月分を支給する。」という趣旨の規定でした。

退職金規程ではよくあるフレーズですが、賞与の規定では、それまでもその後も見たことがなく、驚きました。

※規程と規定の違い:労基法に例えますと、「規程は労基法全体で、規定は各条文」と私は整理しております。


このように、労働契約上(賃金規程の記載など)で賞与の確定給付を約束することは極めて珍しく、もしそのような規定になっていれば、「基本給の2か月分×回数」の賞与を支払わなければなりません。

しかし、何らかの懲戒処分を受け、当該労働者の賞与を懲戒事由に該当したことで減額すると、一事案について「一つの懲戒処分+賞与減額(減給の意味合い)」となり、二重処罰になる可能性が高いです。


懲戒処分では、一事案に対して二重処罰はできないため、結果、上記のようなケースは問題ありとなってしまう可能性が高いのです。


■2 賃金規程等に賞与の確定給付の規定がない場合は?

世の中のほとんどの規定は、賞与支給を確定的に約束はせず、「支給することがある、支給しないことがある、支給を確約しない」などと記載するのが、ごく一般的です。

このような書き方であれば、確定給付ではないため、賞与減額という概念は出てきません。

なぜならば、そもそも支給を確約していないわけであり、支給するとしても会社がいろんな要素で査定をして額を算出しますから、「減額ではなく、プラス査定をしない、またはマイナス査定をし、その結果、労働者個々人の賞与額が決まる(会社全体の支給総額の範囲内で配分が決まる)」ことになります。


■3 確定給付の賞与でない場合、賞与を減らすという言い方はNG

「減らす」とは、あくまで決まった額がありそこから減額するということ、です。

ですので、決まった額があらかじめ無い場合、減らしようがありませんし、そのような言葉を使ってしまいますと、トラブルのもとになりかねませんので、避けていただきたいと思います。


■4 賞与の確定給付の労使慣行が成立していると主張されたら?

賞与の全部でなくても、半分や一部など一の定割合を、一定年数にわたり決まった金額を支給してきた場合、賃金規程などに記載はないものの、労使慣行が成立していると主張されたらどう対応すべきでしょうか?

※労使慣行とは、反復継続的に積み上げられた慣行的事実をいいます。

※労使慣行は、反復継続した一定の事実の積み重ねに過ぎず、当然には法的効力があるわけではないですが、事案によっては一定の効力が発生してしまうことがあります。


この点について、会社側としては、以下の認識をお持ちいただき、主張していただきたいと思います。

  • 労使慣行の成立は非常にハードルが高い。

  • 毎回同じ額だとしても、それはあくまで安定して業績が出ていればそのくらいは払ってあげようというもの。

  • 会社にどんなことがあっても、どんな経営状況であっても同じ額の賞与を払うなんていう労使慣行はない、と主張する。


■5 さいごに

確定給付の賞与規定にしていなければ、賞与について、「減額・減らす」 といったNGワードは避けていただき、トラブルに巻き込まれることがないよう、ご留意いただきたいと思います。

最新記事

すべて表示

ゆるブラック企業とは?20代はどうみている?求職者が選ぶ労働条件とは?

■1 ゆるブラック企業とは? 社労士の会報で見かけた言葉で、私自身は、初めて目にした言葉です。 記事によりますと、ゆるブラック企業とは「仕事は楽だが、成長できず収入も上がらない企業」を指すようです。 なんとも言えない定義ですが、このとらえ方を「わがまま」と認識しない方が良い世の中に変貌してきたのかなと感じてしまいました。 ■2 20代は「ゆるブラック企業」をどうみているか? 「ゆるブラック企業だか

季節性インフルエンザへの会社対応(令和6年アップデート版)

■1 季節性インフルエンザで休んでいいよと言ったら? このような会社の言い方ですと、「雪が予測されるから早く帰っていいよ」という言い方と同じ理屈で、100%の賃金支払い義務が会社に発生する(就労免除のため)と、私はこれまでご説明してまいりました。 この点は、基本的に変わりません。 笑い話として「じゃんけんと同じで、先に出した(上記の場合は、先に言った)方の負け」と、いろんなところで申し上げてまいり

自社での降格と降職の違いは区別すべき

■1 降格は学説・裁判例・弁護士の見解により様々 1-1学説 労働法の権威で学者の菅野和夫先生の「労働法(第十版)」510項(弘文堂)」で、 降格には ・役職や職位を引き下げる降格(昇進の反対)を指す場合 ・職能資格制度における等級を引き下げる降格(昇格の反対)を指す場合 があり、 また、 ・人事権の行使として行われる降格 ・懲戒処分として行われる降格 があるとされています。 1-2裁判例 使用者

Comments


bottom of page