経営者必見!現場を知るための職場環境アンケート

更新日:9月12日

■1 日本人は世代を問わず声をあげない傾向が強い?

これは私の肌感覚なのですが、職場環境を害するような事案が発生しても、世代を問わず会社(特に経営陣の方々)に通報や相談する人は、日本人だからでしょうか、かなり少数派だと感じています。

なぜそう感じるかと言いますと、その段階での私へのご相談がほとんどないからです。

ですので、おそらくお客様(経営陣の方々)に、通報や相談が届いていないのだと思います。

なかには、上長に相談をしているケースはあると思いますが、経営陣の方々にまで話を持っていくような大ごとにはしたくないのだと思います。

上長がご本人から口止めされているケースも結構あるのかもしれません。


ちなみに、通報や相談をしない理由は、昭和の世代は我慢や「和を重んじる」から、平成生まれ以降は「我慢するくらいなら退職」や「自分事でなければ関わらない」から、という感じがします。

上記に当てはまらない「度が過ぎる事案」については、行政や労働組合、弁護士などに相談に行き表沙汰となり、その時初めて会社は事案があったことに気が付くというケースもあります。


■2 経営陣に物申す一般従業員はごく少数

部課長ですら中小企業の経営陣に物申す「骨のある人」は、ごく少数派です。

ましてや、役職のない従業員さんや非正規の方々が、経営陣に通報や相談をするというのは、よほどの人間関係や信頼関係がなければできないと思います。

雇用契約では、どうしても働いてお金をもらっている、という構図になりますので、一般従業員の方の本音というのは、経営陣の方々にストレートに届きにくいと感じています。


ちなみに、一般従業員の方で経営陣の方々に物申すのは、私の立場で言いますと、かなり要注意な人(気合いを入れて対決姿勢を整えている人)が多いです。

その意味では、経営陣の方々と一般従業員の方との間に立つ「中間管理職」の方の役割は大きいと思います。

時に声なき声を拾い上げていただき、時に会社への不満の緩衝材的役割を担っていただくわけですから。


■3 誰にも相談しない、または上長が口止めされている場合にどうするか?

私がおすすめしておりますのは、匿名可の「(仮称)職場環境アンケート」の実施です。

回収する際は、アンケート回答者のプライバシーを担保したうえで、鍵のかかった金属製の箱など(選挙の投票箱のイメージ)を利用して、第三者に情報漏洩しないよう十分に注意していただく必要があります。


従業員数が多くない場合や、手書きにした場合に、匿名可としていたとしても、書いた本人を特定できてしまうことがあるかと思います。

手書きを避けるには、ワードファイル形式で入力してもらったものを印刷して「上記の箱」などに入れていただくか、フリーメールで本人を特定できないアドレスから「アンケート回収アドレス宛」に送ってもらうのも一つの手だと思います。


私自身が回収側として利用したことがないため確定的なことが述べられないのですが、Googleフォームを利用すれば匿名性が担保され、かついろんな質問設定もできるようになるかもしれません。


■4 意外と行われていない職場環境アンケート

私がお客様とお話しをさせていただいている中で、匿名可の職場環境アンケートを定期的に実施されている会社様はごく少数です。

一般従業員の方の本音を聞き出すのは、経営者の方にとって、ある意味で勇気がいることかもしれませんが、風通しの良い職場環境を構築していかないと、今後の更なる働き手不足の時代に突入した時に、企業存続の危機に直面してしまうかもしれません。

いくら仕事があっても、働いてくれる人がいなければ外注するしかないですし、業務品質を外注だけで確保するというのも、相応に難しい経営になってくるのではないかと思います。


■5 平常時ではない使い方

メンタル不調者や離職する人が特定の部署から出やすい、というケースがあります。

理由がわかれば経営者の方も手を打てるのですが、憶測の域を超えない範囲でしか、職場で何が起きているかわからない場合があります。


皆様ご存じのとおり、いわゆるパワハラ防止法が施行されており、パワハラに関する周知や相談体制等は整えていらっしゃるかと思いますが、相談窓口に全く相談が来ない、という場合が多いのではないでしょうか。

少なくとも、私にご相談いただくケースはまだ少ないですから、やはり、会社の相談窓口にも「従業員の声」が届いていないのだと思います。


社内にパワハラが一切ないのであれば、それは好ましいことですが、人間の集まりですから、多少なりとも微妙なものはあると思います。

また、冒頭で掲げたように、「メンタル不調者や離職する人が特定の部署から出やすい」のであれば、その部署に何らかの理由が潜んでいるはずです。

原因のないことに結果は出ませんから。


そこで、従業員からのパワハラ相談は一切来ないという場合、職場環境アンケートの実施が有効です。

最初は回答がゼロかもしれませんが、定期的に実施していくと、徐々に声が出始めると思います。

このような利用方法が、まずは現場の実情を把握するために有効だと考えています。


■6 何度目かのアンケートで、ある人物がパワハラ行為を名指しで書かれた場合

職場環境アンケートに書かれたからといって、そのパワハラ行為が事実かどうかまでは、会社としてはわかりません。

もし実名でアンケートに記入してくれた場合、その方に対して会社として必ずヒアリングをすべきです。

事実関係の確認や他に目撃者がいるかどうかなど、ヒアリング事項は多岐にわたります。

以前のメルマガで取り上げましたので、ここでは割愛しますが、まずはパワハラ申告をした方へのヒアリングはマストです。

ちなみに少数のケースですが、ある特定の人を陥れようとして、微妙な事案を過大に記載する場合もありますので、ヒアリングは事実関係を淡々と聞き、先入観を排除して実施することが大切です。


一方、実名ではなく、匿名のままでパワハラ申告が書かれていた場合はどうすればよいでしょうか(パワハラ行為者は実名で書かれている)。

もし特定の部署の多くの人も知っているという記載があれば、まずはその部署の行為者以外の方からヒアリングをしていくのが良いと思います。

会社の動きを察知されると「パワハラ行為者」と書かれている人が、口止め工作をし始めるかもしれませんし、報復を恐れて誰も何も言わないかもしれません。

ですので、パワハラ行為者とされている人が「年次有給休暇をとっている日」「病欠の日」「出張の日」などでその部署にいない日に、一気にヒアリングしてしまうのがおすすめです。


そして、最後に「パワハラ行為者」と書かれた人にヒアリングをしますが、ここで会社は強烈に本人に事前警告をしておきます。

「犯人さがしや報復は絶対にしないように。すぐにバレますよ。万が一、そのようなことをした場合、あなた自身が更に不利な立場におかれますので、くれぐれも気をつけてください」と必ずきつく伝えます。

※陥れられていそうな場合は、当然、別の対応になってきます。


よほどの大企業でない限り、パワハラ行為者と名指しをされた場合、申告者をある程度想像できるでしょうから、ここはかなり厳しく言うべきです。

万が一、報復行為をされてしまい、申告者の心身が傷つくようなことがあれば、会社への従業員の信用は一瞬にしてなくってしまいますので、極めて要注意です。


これ以上書きますと、パワハラ調査の話になってしまいますのでやめますが、ともあれ、経営者の方がつかめなかった「メンタル不調者や離職者の発生」理由を、この職場環境アンケートでつかむことができ、かつ対策を打つことができるようになると考えております。


■7 平常時の使い方

特に何もなくても、定期的に実施された方が良いと思います。

従業員の本音を知っていくことは、とても大事だと思っています。

そして、その本音に対して、会社が真正面から取り組んでいけば、声をあげてくれた従業員は当然のこと、様子見をしていた従業員からも、会社は信頼を得ていけると考えております。

職場環境アンケートを実施するうえで気を付けていただきたいことは、形式的なアンケート実施で終わらせないということです。

職場環境をより良いものにしていくため、是非、従業員の生の声を職場に反映させていただきたいと思います。

もちろん、合理性のない要求や、特定の人を陥れようとするケースには十分気を付けながらですが。


■8 おわりに

定期的に職場環境アンケートを実施することで、いい意味での緊張感が生まれます。

すなわち、管理職だけに限らず、同僚間でもいじめをする傾向のある人に対し「アンケートに名指しで書かれるかも」という気持ちにさせることができ、抑止効果が期待できます。


また、真面目に黙々と仕事をする人ほど、声をあげずに我慢しているケースが多いように思います。

昭和生まれの人までは、我慢に我慢を重ね、会社で頑張ってくれてきたかもしれませんが、平成生まれ以降の人には、通用しないことが、今後多くなっていくと予想しています。

なぜならば、働く人の人口が減っていくのはどうしようもないことで、働く側が会社を選ぶ時代に突入し始めているからです。

また、昭和生まれに比べ、平成生まれの以降の方は、いろんな意味でドライだと思います。

ダメだと思ったら、義理人情を抜きにして、躊躇なく退職する人は多いと思います。

経営者が会社を守るためには、良い人材を絶対に確保しなければなりませんから、これからの時代に「職場環境をより良くする努力」は避けて通れないと思っています。


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