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試用期間の延長規定はお忘れなく!

■1 そもそも試用期間とは?

試用期間について、私の業界では、「解約権留保付労働契約」という長い漢字の契約解釈がなされています。

つまり、労働契約を解約(=解雇)することが保留されている期間ということになります。

ですので、試用期間でサヨナラの場合、同期間満了までに会社から、「あなたを本採用することはできません(=本採用拒否=解雇)」というのですが、意外と、この点について労働者側と本採用拒否について紛争になるケースは、これまでは少なかったです。

理由は、法的な解釈はともかく、労働者側も「試用期間だから仕方がないよね」という考えで、会社に異議を申し立てなかったからというのがほとんどだからだと思います。


■2 でも、実は結構ハードルの高い本採用拒否

厳密には、本採用拒否=完全な解雇と同じ、ではないのですが、ほぼ両者のハードルの高さは変わりません。

ですので、これまで何も紛争が起きなかったからといって、今後も同じく起きないとは、全く言えないと思います。

なぜなら、労働者の人間的資質や性質が、昭和の人たちよりも大幅に変化しているからです。

これらのことから、本採用拒否は慎重に行うべき、というのが私の実務感覚です。


■3 そうは言うけど、勤務態度・成績・勤怠等が不良なのだけど?

このようなご相談は、とてもよく承ります。

そんな時に検討すべきは、本採用拒否での一発勝負ではなく、試用期間延長というワンクッション入れる方法です。

試用期間を3か月に設定している就業規則が多いと思いますが、私の考えも同じで、そして試用期間延長に関しては「長くて3か月まで」だと考えております。

あまり長すぎる延長期間は、労働者に不利益(解約権留保付きのため)が大きく、例えば1年間まで延長するとなると「公序良俗に反する」という言い方をされるリスクもあるかと思います。


■4 試用期間延長の検討をする際の注意点

まず大前提は、自社の就業規則に試用期間延長の規定があるかどうかです。

当該延長規定がなければ、試用期間の延長は、労働者との個別の同意があったとしても「就業規則の規定(労働条件の最低基準)を下回る合意は無効である」との裁判例があり、無効となる可能性は高いです。

ですので、就業規則の試用期間延長規定は、必ず規定すべきです。

また、入社時に労働契約書を取り交わすと思いますが、私の場合、新規採用の正社員用労働契約書にも「試用期間延長の規定」を必ず入れるようにしています。


延長期間は、上記で述べました通り、最大で3か月ぐらいが良いと考えています。

加えて、重要な点として、「試用期間延長のための合理的理由」が必要です。

いろんなケースがありますので、具体例は挙げませんが、「正社員として本採用するかどうか、適格性などの判断が当初の3か月ではできない合理的理由」が必要です。

この理由は、後々の紛争リスクを踏まえ、延長期間と一緒に書面で作成し、本人に通知すべきと考えています。


■5 昭和と平成時代の試用期間でサヨナラできる、は大いなる勘違い

法的には、試用期間だからといって、簡単に労働契約を解約することはできません。

かなりリスクを伴います。

これからの時代、昭和・平成で通じた義理人情・常識は通用しないことが多くなってくると思いますので、試用期間の延長規定がない会社さまは、必ず規定されることを強くお勧めいたします。

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