お客様のご相談をお受けしていて感じることが多いのが「社長の右腕」の存在の有無です。
右腕(私はよく「番頭さん」と言ってます、古風ですが…)がいらっしゃる場合とそうでない場合とでは、労務問題の発生頻度や深刻度が変わってくる傾向が強いです。
そこで、今回は、私が勝手に考えている「社長の右腕(番頭さん)の重要性」について、述べたいと思います。
■1 社長と奥様で労務管理ができる水準
このお話は、お客様に時折させていただくのですが、社長と奥様とで労務管理ができる従業員数の適正値は、30名ほどだと私は思っています。
特に根拠があるわけではないですが、経験的に、30名までの従業員数の会社さまでは、労務問題が起きにくいと感じます。
理由は、社長と奥様が、従業員一人ひとりとコミュニケーションがとれていて、従業員のことをよくわかっているからだと私は思っています。
かなり適切な例えではないのですが、小学校でのクラスの人数も、段階的に35名体制になっていきます。
詳しくはわかりませんが、理由のひとつに、先生一人でみれる生徒数の限界値があるのかもしれません。
■2 人間は自分のことをよく知っている人に対して共感や信頼を
いろんなところで言われていることだと思いますが、改めて、このように感じます。
30名規模までで労務問題が起きにくいのは、労働法規をがっちり守れているからというよりも、社長や奥様が従業員のことをよく知っているから従業員は裏切らない、ということなのだと思います。
「従業員のことを経営陣がよくわかっている」というのが、労務の現場では「順法」よりも大事だと個人的には思っています。
では、従業員数30名を超えてきた場合は、どうなのでしょうか?
■3 五十名が限界値で、それ以上なら右腕(番頭さん)は必須
労務問題を起こす人の社内での割合は、私の肌感覚ですが、2%から4%だと思っています。
つまり、従業員50名規模だと少なくとも一人は必ずいる、ということになります。
私のセミナーなどにご参加いただいた際、従業員50名規模の社長とお話ししても「うちの会社に裏切る従業員は絶対にいない」と断言する方がおられます。
この先10年以上、一切の労務問題が起きなければ、それは素晴らしいことですが、私は裏切る可能性のある人は、残念ながら、いて当たり前だと思っています。
ただ、裏切る理由・きっかけがない、裏切るまでの会社への恨みはない、上司は好きではないが経営幹部が自分のことをよくわかってくれている等の理由で、結果として労務問題に発展していないのだと思っています。
従業員数30名ほどであれば、社長と奥様のお二人で従業員と向き合うことができますが、50名を超えてきましたら、もう無理ですので、社長の代わりになる右腕(番頭さん)が、どうしても必要になってきます。
(30名から50名の場合は微妙で、社長のキャラクターによります。)
番頭さんがいる場合といない場合とでは、労務問題の発生頻度や深刻度が、全く違うと感じます。
番頭さんがいれば、労務問題に発展する前にワンクッションありますが、いなければ、社長と奥様が認識していないところで勝手に起きてしまいます(上司や同僚が原因など)。
■4 どんな番頭さんが良いか?
社長のキャラクターや社風などによって一概には言えませんが、個人的には、長く会社に在籍している「たたき上げ」の方が良いと思っています。
そして、ここからが一番大事なのですが「何があっても裏切らない・自分の評価より会社のために泥を被る覚悟がある・現場の管理職と従業員のことを熟知している・聞き上手」な番頭さんがいれば、とても安心だと思います。
このような番頭さんがいる会社なら、50名はいけると思いますし、番頭さんの補佐役がいれば100名はいけると思います。
(いける=労務管理が行き届きやすい)
このような番頭さん、そして、その補佐役が多ければ多いほど、労務管理が行き届く従業員数が増えるということが言えます。
逆を申し上げますと、番頭さんやその補佐役がいなければ、従業員を増やさない方が安全だということです。
■5 売上と従業員数
冨島に言われなくてもわかっていると思われるかと存じますが、それでもあえて申し上げますと、売上を上げるために従業員数を増やす、というご判断はリスクが高いと思います。
従業員を育て、生産性を上げ、利益率を上げ、それでも売上が増加していくときに、番頭さんがいれば、30名(場合によっては50名)を超える従業員を雇用する、というのが理想的だと思います。
番頭さんがいなければ、アウトソーシングして利益を確保した方が、従業員を増やすよりもかなりリスクは低いですし、小回りがききます。
■6 おわりに
私は労務問題のことしか考えていませんので、こんな面白くもないお話しをするのですが、深刻な労務問題になりますと、本当に苦しくなりますし、労力と時間とお金がかかります。
そのリスクを考えた時、このような面白くもないお話しをせずにはいられなくなるのです。
お客さまが日々平穏であってほしい、万が一、労務問題が起きても小さいうちに終結してほしいと、心から願っております。
会社の日々の平穏のため、問題が起きそうでも火種のうちに消火するため、早め早めにご相談ください。
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