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労務問題の奥深さ

更新日:2022年12月9日

■1 労務問題は「諸行無常の響きあり」?

有名な平家物語の冒頭のことばに、「諸行無常」とあります。

私の言葉で申しますと、「もろもろの事柄は、常に変化をしていく」という意味合いかと思います。

労務問題も同じことが言えます。

使用者も労働者もお互いに人間ですから、常に目まぐるしく変化をしていきます。

ですので、労務問題の類型化まではできても、同じように対応しておけば問題ない、ということはかなり少ないです。


■2 問題社員の歴史と性格、おかれた状況を踏まえる

問題社員をみるときに、入社前、入社時、その後、そして現在というように、問題行動に至った経緯を採用段階から情報収集することが多いです。

今の問題社員になってしまった理由が、もともと問題社員だったのか、他にきっかけや原因があったのか、それとも複合的なのか、など分析します。

性格も当然ですが、今おかれている状況(例えば、ギャンブルにはまっているなど)を、会社の方が知っておられる範囲で、いろんなことをお聞きします。

ちなみに、前回号でご紹介した「ダイヤモンド社の適性検査・DPI」ですが、問題社員のDPIの検査結果は、おおむね問題行動と関連しているそうです。

※人の目は主観ですが、検査結果は客観ですから、おおむね当たるようです。


■3 およそのパターンは見えてくる

上記■2の情報収集の結果、だいたいの今後の行動予測をたてることができます。

そのうえで、4パターン(最悪・中間・最小限・ラッキー)ほどに分類し、備えを始めます。

どのパターンになっても会社として即応できるよう、準備等をお願いすることが多いです。

労務問題に発展する前の問題行動があれば、先手必勝、備えあれば憂いなし、そして「じゃんけん的な対応をする機会があれば、後出しじゃんけんで勝つ」というスタンスで事案に臨みます。


■4 しかし、過去の問題社員対応で、まったく同じ対応はほとんど記憶にない

当たり前のお話なのですが、十人十色といいますので、個々人によって、対応の細かな部分は違ってきます。

この人なら、このような性格などを踏まえると、この言い方はやめたほうがよいが、一方であの人なら逆に、この言い方のほうが効果的など、その時々で相手の心理の変化を予測しながら、対応策をお話しさせていただいております。


■5 冨島は普段何をしているの?

社労士開業以来、今日に至るまで、上述のようなご相談に日々対応しており、重たいご相談ですと、一気に忙しくなります。

その場合、ほぼ常に頭で、その重たいご相談の対応策を考えています。


■6 労務問題をなぜ奥深いと感じるの?

それは、私のような飽きっぽい性格の人間でも「これでやりつくした、知りつくした」と思えることがなく、ご相談の度ごとに新たな発見があり、新たな手法を考えたりしていかないとベターな対応ができないなと感じることが多く、飽きる要素が労務問題には見当たらないからです。

それゆえに、労務問題は奥深いと感じるわけです。

当たり前なのですが、経営者の方の心のすべてを知ることは不可能であり、また労働者の方の心のすべてを知ることも不可能です。

労務問題とは一言で申しますと、「人間対人間の感情とお金のもつれ」がほとんどですから、人間を離れて労務問題対応は語れません。

今のところですが、労務問題の争点について、法律論は後付け(感情論と金銭面が先)になってしまっていると思うことが多いです(平成生まれ以降の方は、ちょっと様子が違いますが)。

ですので、この先、私がどれだけキャリアを重ねても、労務問題は奥深く、これで十分と思えることはおそらくないのだろうと感じております。


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