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労務管理能力とアンガーマネジメントは両立する?しない?

更新日:6月18日

今月6月6日は、アンガーマネジメント(直訳:怒りの管理方法)の日だということを、朝のニュース番組で知りました。

怒りがこみ上げてきたら6秒かぞえて待つ、ということから、その日にしたようです。

ちなみに、6秒ルールの他に、左手を握りしめるのも、脳に作用して一定の効果があるようです。

私の仕事は、感情論と法律論とが絡み合うことが多く、専門医がアンガーマネジメントについてどのように述べているのか、本などで調べたことがありました。

 

ということで、今回は、労務管理スキル(※)とアンガーマネジメントについて、日ごろから考えていることをテーマにしたいと思います。

法律論や実務のテクニックは記載しておりませんので、軽くお読みいただければ幸いです。

※ここでの労務管理スキルは、「労務問題の防止・対応・解決」に絞ったものです。

 

私自身の労務管理スキルが向上するのにあわせて、アンガーマネジメントも向上しているのか、自問自答することがあります。

また、お客様が労務問題に直面した際には、「お気持ちは痛いほどわかりますが、こういう時ほど淡々とした対応がベターです」と申し上げております。

 

■1 労務問題の基本的な特徴

繰り返し申し上げておりますが、法律論より感情論がかなりの割合で先行するのが、労務問題の特徴です。

ただ、Z世代以降の人は、そうではない類型(例:感情抜きで残業代請求など)が多くなってはきましたが。

ゆとり世代以前の人であれば、やはり感情論先行型が多数派です。

私の世代あたりになってきますと、「感情・お金の問題・理屈」という3つの要素が揃っていることが多くなっていると思います。

 

■2 労務問題が感情論先行なら労務管理スキルとアンガーマネジメントの両立は難しい?

オーナー経営者の方にとっては、なかなか難しい事だと思っております。

その理由は、専門医が「怒りは放置するのが一番」だと言っているからです。

医学的に、そのようなのです。

私もプライベートで試しにやってみましたが、確かに6秒ルールや左手握りよりも、効果がありました。

 

釈迦に説法ですが、会社経営への情熱がないと、そもそも会社自体が成り立たちません(起業もされないかと)。

情熱がなければ怒る気持ちもわいてこないかもしれませんが、情熱が熱ければ熱いほどに、怒る気持ちがわいてくるのは自然なことだと、私は思っています。

その感情を放置するのは、無理があると思っています(期待し、信じた従業員に対しては特に)。

 

■3 では、アンガーマネジメントは軽視しても?

私は軽視すべきでないと思っています。

私自身は自分にそう言い聞かせて、これまで社労士業務を行ってまいりました。

開業当初は特に、そして今でもたまにありますが、極めて不可解な労務問題が発生しますと、「●●●●●!」と思うことがあります。

しかし、ご相談事案に対し、私が冷静に把握・分析していかないと、ベターな助言ができませんので、アンガーマネジメントは常に意識しています。

 

■4 では、オーナー経営者の方はどうすればよいのか?

最終決裁(雇用契約終了とお金がらみ)以外については、労務担当の役員(※)の方に、なるべく委任していただき、発生した労務問題をご自身が普段考えなくてもよい体制を整えていただくのがベターだと思います。

※お客様ごとで、他の呼称の方がご担当になる場合も当然あります(以下、同じです)。

 

■5 しかし「問題社員の放置」は絶対NG

労務管理の視点からは、問題社員の放置は絶対にあってはいけません。

このブログで繰り返し述べていることですが、積極的に関与し、まずは注意・教育・指導をしていかなければなりません。

そうなりますと、専門医の言う怒りのコントロール「放置が一番」と、労務管理とは、相反することになります。

 

■6 非常に多い残念なケース

会社が「この人は会社が求めていた人材だ!」と期待して採用した人が、試用期間後になると何やらおかしな言動が目立つようになり、なおかつ、入社半年程たっても期待した業務スキルとはかなりかけ離れた結果しか出せない、というのは、定番中の定番です。

社内でゴタゴタ < 法的不足を労基署へ申告 < 弁護士関与・労働組合案件 < 訴訟 

このような順番で面倒な事案になっていくのが、非常に多いです。

 

■7 労務担当役員の方(私も当然)のアンガーマネジメントは重要

労務問題の判断を誤りますと、下手をすれば、ネットで炎上したり、メディアで報道されたりしかねません。

ですので、被害を広げないためにも、事案発生の際は、冷静に淡々と対応しなければなりません。

そこで、(私は当然として)労務担当役員の方の感情のコントロールが大変重要になってきます。

専門医の言う「放置」は絶対できませんので、積極的に関与しつつ冷静に、という対応が求められます。

 

私は約15年にわたり労務問題専門で社労士業務を行ってまいりましたので、経験上冷静になれることが多いですが、労務担当役員の方にとっては、コントロールが難しい場面も多々あるかと思います。

そんな時にどうすればよいかですが、月並みですが、私や他の役員の方など(秘密厳守ができて権限のある方のみ)にお気持ちをお話しいただくことが一番だと思います。

シンプル過ぎる手法ですが、他にこれだという妙案が見当たりません。

労務管理スキルとアンガーマネジメントは、両立させる工夫と忍耐が大事だと、いつも思っております。

ちなみに、私の場合、守秘義務の関係で話せませんので、オフの日にあれこれ考えなくてすむ趣味をみつけ、それを楽しむことでセルフコントロールしています。

 

■8 おわりに

労務問題が発生した場合、オーナー経営者の方には事案の推移を一歩後ろに引いてみていただき、そして労務担当役員の方にはお気持ちをできるだけ淡々と平静を保てるようしていただきたいと思っております。

そのために、私もおりますので。

おもいっきり昭和ですが、「平時が戦時、戦時が平時(日常が戦であり、戦の時こそ平静を保つという趣旨かと)」という言葉を若いころに聞いたことがあるなと、この記事を書いていて思い出しました。

まずは、私自身が改めて実践していこうと思っております。

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