■1 会社が労務問題に勝利したら何か得をするか?
いろんな評価がありますが、労務問題を解決した「まさにその瞬間」に、会社が経済的に何か得をすることは、基本的にありません。
なぜなら、労働者に対して損害賠償請求ができたとしても、その金額を上回るコスト(弁護士費用など)がかかっていたり、損害の全額を請求するのは困難(会社は労務提供で利益を得ているという考え方から、損害の概ね25%しか労働者に請求できないという裁判例の相場観)だからです。
■2 では、結局何が残る?
心情的には悔しさが残ってしまいますが、教訓は得られます。
また、会社が労務問題に真正面から向き合っていたことで、他の在籍従業員に会社の姿勢を見せることができ、新たな労務問題を発生させにくい土壌が形成しやすいと考えています。
労務問題であっても、会社にとって無駄なものは、基本的には無いと思っています。
もちろん、当該会社がそれなりの労務管理をしていることが前提ではありますが。
■3 労務管理で会社はどうすれば良いのか?
抽象的ですが、私は「労務問題に負けない労務管理」が大切だと考えています。
野球に例えますと、点を取られなければ負けることは絶対になく、延長や再試合など、次のステージに勝負を進められます。
労務問題で負けた場合、経営者の方や会社にとって、極めて不愉快な結果となります。
ですから、労務問題が起きても負けない(=悪くて引き分け)労務管理が大切だと思っています。
■4 労務リスク回避は地味
ネガティブな事案は火種を早め早めに消していかないと、いつ火事になるかわかりません。
ですので、地味なイメージが付きまといますが、初期消火、もっと言いますと「予防が大事」だと思っています。
例えが良くないかもしれませんが、火事場で人を救出する消防署員の方々は、とても勇気のある素晴らしい方々ですが、もっと大きな視点で考えますと、そもそも火事を起こさないために毎日建物の火元を点検している警備員等の方々のほうが、とっても地味ですが、尊いと私は思っています。
■5 労務問題に負けなければ、そのうち争いごとが起きにくくなる(=勝つ会社)
労務問題が起きない会社を、私は「労務管理で勝利している会社」だと思っています。
労務問題に対応することは、相当の忍耐と手間(場合によってはコストも)がかかりますが、必ず後になって役に立つ(争いが起きにくくなる)と思っています。
事案発生時の一番大切な要因は、「真正面から向き合って淡々と乗り越えていくこと」だと思っています。
とても難しいことですが、私にご相談いただくことによって、少しでも淡々と事案に対応していただきたいと、いつも思っています。
■6 冨島はいつもネガティブなことを言うよね!
そうなのです。
労務問題が発生した際、私はいつも、
最悪のケース > 中間 > 最小限 > ラッキー
の順にお話しするよう心がけております。
ですので、私のネガティブな予測が外れるのが、会社にとって、ベターな結果なのです。
ただ、仮にラッキーな結果(または予想外の無風)で事なきを得たような場合であったとしても、今後の会社の労務管理に「起きた事案」をいかしていただきたいと思っています。
また、実際に「最悪のケース」になる確率は、事案によって変動しますが、必ずあります。
最悪が現実化すれば、それこそ、相当に悔しく悩ましい日々を送らねばならなくなりますので、必ず「最悪のケース」はお話しするようにしています。
その理由は、事前の心構えをお持ちいただくことはもちろんですが、事案に真正面から向き合っていただき、無駄な労務問題ではなく、後になって役に立ったと言える事案にしていただきたいからです。
■7 さいごに
偉そうなことを述べましたが、「冨島が経営者の立場だったら、上記で言っていることができるのか?」と問われましたら、答えはきっと「99%無理で、まず怒りに震える」になるはずです。
人間ですから、すべてを理性で片付けられませんし、そもそもすべてを理性的に考えて労務管理をしていたならば、少なくとも「不愉快に思う労務問題」は発生しにくいはずです。
また、自分事になりますと、ネガティブな問題が発生した場合、理性よりも感情が先走るのは仕方のないことだと思います。
結果、「淡々と冷静さを保ちつつ、自分の考えや判断だけで問題を乗り越える」のが、結構難しくなってしまうのかと思います。
ですので、経営者の方にとって、社内では「番頭さん的右腕の存在」、社外では「私のような相談先」がないと、従業員数が多くなればなるほど、労務問題の発生リスクが高くなってしまうのかと思います。
頼りになる人がいれば、相談できる先があれば、「淡々と冷静さを保つ方向」に、気持ちをもっていきやすいと、私は常々感じております。
※私自身のセルフコントロールは、いろいろ工夫をしておりまして、基本的にはその日のうちに冷静さを取り戻すようにしています。
※極めて重たい事案の場合は、必殺技を使っています。
Comments