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令和の時代の未払い残業代請求

ある弁護士(使用者側の労働法専門)のラジオ番組を聴いていて、「なるほどなぁ」と思いましたので、取り上げます。


■1 平成までの残業代請求の一般的傾向

お金のために請求するというよりは、辞める時に会社に恨みを晴らす、不当解雇のついでに請求する、ハラスメントで訴える時についでに請求するなど、退職時の感情論や、「ついでに請求」が、平成では多い傾向だったと思います。

ですので、辞める時に円満退職してくれれば、未払い残業代請求に発展する機会は、かなり少数派だったのだと思います。

(私の実務経験ではありません)


■2 令和の未払い残業代請求

あくまで冒頭のラジオ番組で取り上げていた内容ですが、今後、下記のような傾向は強くなっていくと思います。


【ラジオ番組での弁護士への相談概要】

・約8年間会社に在籍しているが、過去1円も残業代が支払われていない。

・入社の時に、残業代は営業手当5,000円に含まれてると説明され、それが普通だと思っていた。

・友人に上記の話をしたら「今時、そこまでちゃんとブラックな会社は珍しいね」とドン引きされた。

・そのうえで、このラジオ番組を聴くようになって、「世の中はこんなにもホワイトになっているのか」と認識した。

・この度、転職をするので、会社に未払い残業代請求をしたいが、どのような弁護士事務所を選べばよいか?

・30代半ば。


<証拠はしっかり残している>

・日報をpdfで過去三年分残している。

・社長承認のパソコンのログがある。

・給与明細に残業代、定額残業代の記載がない。

・就業規則に定額残業代の記載がない。


<相談者に対するラジオ番組の弁護士の評価>

・礼儀正しく、普通の人と感じる。

・転職をきっかけに、請求できるものは普通に請求する、という感覚。

・10年ぐらい前までは、社長が「うちはいい子たちばかりだから、未払い残業代請求なんかする人間はいない」と言われることが多かったが、もう時代が違ってきている。

・払うものは払ってくださいという時代。


■3 冨島苦笑い

使用者側の労働法専門弁護士のラジオ番組に、上記のような「未払い残業代請求をするための労働者側弁護士を選び方」を相談しているわけです。

弁護士の回答は、3パターンでした。

(1) 全国展開の大手法律事務所→スピード解決で金額もぼちぼちでいいやという場合

(2) 本気の日本労働弁護団など→徹底的にやってくれる

(3) 未払い残業代請求専門の法律事務所→(1)と(2)の中間


<弁護士の感想>

転職のタイミングで、未払い残業代請求を普通の権利行使としてやる時代になってきている。

経営者の方も考え方を変えないと大変なことになる。


■4 冨島の所感

基本的に、ラジオ番組の弁護士に同意見です。

平成生まれ以降の方々には、私のような「昭和の魂」はほぼ通用しません。

Z世代以降には、まず通用しないと思います。

前々からそう思っていましたが、令和になってから、顕著になりつつあります。

いろんなことを言いたい気持ちがありますが、世の中全体が変化しています。

当然、労働市場も変化しています。

ということは、「あしたのジョー」や「東京ラブストーリー」などが大好きな昭和生まれの私の世代も変化せざるを得ないです。


私のお客様(経営者の方)も、私と同じ年齢の方々が非常に多くなってきました。

私が40歳ぐらいの頃はかわいがってもらう的なお付き合いの仕方をしていただいてましたが、私も「経営者の年齢層ど真ん中」になってきました。

ですので、まずは私自身が「時代はもう変わったんだ」という強い意識を持たねばと、強く感じています。


■5 未払い残業代請求の時効は3年で、そのうち5年

民法改正により、とりあえず、賃金請求権の時効が3年となっていますが、最終的には5年になります。

このメルマガをお読みいただいて、「まずい」と思われた経営者の方は、残業代の支払いについて、可及的速やかに対策を講じられることを強くお勧めいたします。


■6 さいごに

昭和ど真ん中生まれの私にとっては、「なんだかなぁ」と思う時代になってきましたが、きっと、明治大正生まれの方々は、私が生まれた昭和ど真ん中に、「なんだかなぁ」と思われていたのだと思います。

すがすがしく生き残るために、変化に対応してまいりたいと思います。

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