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パワハラに対する被害者の希望による事実認定と懲戒処分

更新日:2023年3月31日

職場のハラスメントでは、パワハラ・セクハラ・マタハラの3つが代表的ですが、被害申告が一番多いと実務で感じますのはパワハラになります。

ここでは、被害申告者(以下、被害者とします)が虚偽ではなく、真実を申告しているという前提で、述べていきたいと思います。

タイトルは「パワハラに対する被害者の希望による事実認定と懲戒処分」です。

かなり大事なポイントですので、2回のメルマガにわけて、なるべく詳しく述べていきたいと思います。

なお、ヒアリング方法の詳細につきましては、文字数の関係で割愛いたします。


■1 被害者にまず確認すべきこと

5W1Hを明確にしながら被害状況をヒアリングしていきますが、必ず被害者に確認していただきたい事を含めたトークとしましては、

「●●さんのおっしゃる状況について、まずは会社として事実関係を調査したいのですが、よろしいですか?」

→OKの場合

「その状況を、●●さんのお名前を出しつつ、周囲の方にもヒアリングをしても良いですか?」

→OKの場合

「本日申告していただいた内容の詳細について、また根拠資料については●●さんのプライバシーに配慮した形で、周囲の方に事実関係の確認と根拠資料の開示をしても良いですか?」

→OKの場合

「最後に、周囲の方と同様に事実関係の確認と根拠資料の開示を、行為者(以下、加害者とします)にしても良いですか?」

以上、最低限の4点になります。

被害者のOKが出ないと、会社としてパワハラの事実認定が困難になり、かつ加害者の懲戒処分もできなくなってしまいます。

以下、被害者の希望としてよくある4つのパターンに分けて、述べていきます。


■2 被害者が誰にも言ってほしくないと希望(パターン1)

会社としては、ほぼ聞き役になるしかなく、申告事案の事実関係の確認ができないのであれば、当然加害者に対して懲戒処分もできません。

パワハラは、中には極めて深刻なものもあり、被害者に万一があるかもしれません。

加害者におびえていて周囲の人にも確認してほしくないという精神的に追い詰められているケースもあります。

このような場合、事案の事実認定はできなくても、被害者と加害者を引き離すべきです。

加害者側を異動させるのが一般的ですが、被害者が異動したいと希望した場合には、被害者側を異動させることもあります。


このようなパターンは、ものすごく根深いパワハラが内在している可能性があり、被害者も複数いる場合も多々ありますので、上記の異動後しばらくしてから、匿名可の職場環境アンケートを実施したりして、そのアンケートの中に「パワハラを見た、聞いた、された」などの項目を入れ、上記事案の加害者があぶりだされてきたら、アンケート結果をもとにした加害者へのヒアリングがしやすくなり、もし本人にも身に覚えがあるというなら、会社として注意をすべきです。

なお、この面談は後日のために、客観的な証拠として残すべきです。


■3 当事者だけでの事実認定(パターン2:あまり多くはないですが)

周囲の人には言ってほしくないと被害者が希望する場合、被害者と加害者からのヒアリング内容で、事実認定をしなければなりません。

双方の話に食い違いがなく、加害者側が認めているのであれば、手続きを踏んだうえで、極めて軽い事案以外は懲戒処分をすべきです。

ただ、双方の言い分に食い違いが出た場合、物証(防犯カメラ映像など)があればともかく、物証がなければ、周囲の目撃者を探すわけにもいかず(被害者希望)、会社としてはどちらが事実なのか判断ができません。

この場合は懲戒処分に踏み切るのはリスクが高いので(推定無罪)、加害者にパワハラに該当しそうな言動に対し今後の注意を促すとともに、加害者と被害者を引き離した方がよいです。


■4 被害者と周辺の第三者からのヒアリングのみ(パターン3)

これも悩ましいことになることがあります。

加害者がとても恐ろしい人で、被害者の希望としては、自分と周辺の第三者にだけ事実確認を求めるケースなどです。

被害者の事案の供述と、周辺の第三者の供述が一致している場合には、一応の事実認定はできます。

周辺の第三者と被害者に利害関係が全くなければ、その信用性は高まります。

しかし、です。

この場合には、被害者の希望により、加害者側からはヒアリングができていません。

できないのが前提ですが、仮に、加害者側からヒアリングをしたとすれば、加害者からの有効な反論があるかもしれません(周囲の人は知らない事実など)。

また、事案に対する加害者の言い分を聞いていない(弁明の機会を付与していない)ため、懲戒処分はできません。

けん責などの軽い処分でも、加害者側から何も聞かずに実施するのは、極めてリスキーであり、違法な懲戒処分だと争われることにもつながりかねません。

ですので、パターン3の場合は、事実認定どまりなのです。

しかし、何もしないわけにはいきませんので、少なくともパターン1の対応はすべきです。


■5 当事者と周辺の第三者からヒアリングが可(パターン4)

これが一番理想的です。

大事なパターンですので、ヒアリングの順番だけ申しますと、被害者→周辺の第三者→最後に加害者、が良いと思います。

詳細は省きますが、刑事ドラマでの、被害者届→聞き込み+証拠探し→任意同行か逮捕して事情聴取、とよく似たプロセスです。


この理想パターンを被害者が希望した場合、

  1. 被害者と加害者の供述で一致していることを事実認定

  2. 上記での相違点については、被害者加害者の両方に利害関係のない信用できる周辺の第三者からヒアリングをし、事実を判断

  3. 上記2つを経て、パワハラがあったと事実認定できる場合には、軽微なものを除き、原則懲戒処分する

ということになります。

無効な懲戒処分と言われないように、加害者への弁明の機会付与は証拠で書面の証拠で残し、加害者側の異動(被害者と離す)も人事権の行使として行うべきです。

もちろん、就業規則に「パワハラをした場合の懲戒規定」と「配置転換を命ずる規定」があることが大前提です。


■6 さいごに

私が見聞きしている範囲でも、パワハラは被害者にとても深い傷を残します。

セクハラは言うまでもありません。

私個人の意見ではありますが、パワハラ・セクハラは、会社として全力を挙げて防止していただきたいと思っております。

他のハラスメントも同様ですが、パワハラ・セクハラは、特に、です。

セクハラは故意犯(または勘違い)で、パワハラは多くの場合、無意識です。

地道な啓発以外に、これといった特効薬はありませんが、1年に1回程度の匿名可の「職場環境アンケート」は是非行っていただきたいと思っております。

それと、会社のハラスメント相談窓口に被害申告がしやすいという労使間の信頼関係をさらに築いていっていただきたいと思っております。

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