■1 問題社員の類型で1位は?
ダントツで、無自覚タイプ型です。
他にいろんなパターンがありますが、今回は、無自覚タイプに絞ります。
問題行為の中でも、ハラスメント、協調性不足、職場秩序を乱す、勤怠不良等、あげるとキリがないのですが、あげた中で勤怠不良以外は、物的証拠がないことが非常に多く、口頭で指摘や注意をしても、本人としては身に覚えのないことを会社から言われたと、逆恨みするケースもあります。
問題社員に自覚を促す意味でも、改善を教育指導していくにも、そして万が一に備えるにも、以下の点は重要ですので、未実施のお客様は、コツコツと始めていただければ幸いです。
■2 なぜ物的証拠がないか?
シンプルなのですが、会社が物的証拠化していないため、というのが理由の1位です。
多くの人は普通の社員さんか、できる社員さんで、上記■1のようなことを日常的に発生させることがないため、問題社員の問題言動をその都度正確に記録し物的証拠化するという作業(結構面倒なのですが)できていないというのが私の印象です。
ちなみに、企業内での問題社員の占有率は2%から10%程というのが、私の肌感覚です。
■3 どのように物的証拠化するか?ステップ①
いろんな方法があるのですが、一番穏当でシンプルな方法は、ノート1冊(便箋のように切り離さないもの)を当該問題社員の上長らがそれぞれ持ち、問題言動発生の都度、かならず日時・場所・登場人物・理由・何をどのようにどれくらいやったのか等(いわゆる5W1H)を、上長らの記憶が鮮明なうちに、消しゴムで消えないボールペンで書きこんでいくというのが、第1ステップです。
積極的におすすめするわけではありませんが、映像と音声が鮮明な防犯カメラが社内にない場合には、音声録音+その時の様子のメモ(例えば、口頭で注意している私をバカにするような●●のしぐさをした、など)があると良いと思います。
音声データ自体が物的証拠になりますし、音声データだけではわからない様子(防犯カメラの映像のかわり)をメモしておくと、その言動の悪質性などを物的証拠化しやすいと考えています。
※やむなく音声を録音する行為は、当事者が録音をするわけですから盗聴ではなく、やむを得ない業務上の必要性(問題社員を教育指導していくために、どのような言動があったかを本人に正確に伝えるためなど)があると考えます。
■4 どのように物的証拠化するか?ステップ②
やはり、紙が一番です。
上記■3で集まった各種証拠をもとに時系列に書面化し、注意書などに詳しく書いていきます。
※音声データなどのデジタルデータは、書面とは別に、そのまま保存してください。
そして、それらの言動があったから今回は書面での注意としており、今後は発生させないよう会社として本人に注意します。
単に注意書を渡すだけではなく、本人を目の前にして、書面の内容を読み上げます。
その際、読み上げる人とは別に、書記係の人がいた方が良いです。
※人数は2人までが良いと思います。
その理由は、注意書を読み上げている際の本人の様子(例えば、知らんぷりして顔を横に向けているなど)を残したいからです。
場所は、会議室など、他の従業員さんのいないところにしてください。
みんなの前での注意と書面を渡す行為をとらえて、「上長らによるパワハラだ。そのせいでメンタル不調になった。その診断書もある。これは労災ですよね?また、会社の安全配慮義務違反ですよね?出ること出るか検討します!」と、(自分で書いていて嫌な気持ちになりましたが)嫌なパターンが容易に想像できますので、くれぐれも場所には注意してください。
書面は封筒を用意せず、裸のままで手渡してください。
封筒に入れてしまうと、そんな書類は入ってなかったとの口実を与えてしまう可能性が残るからです。
また、会社印や代表者印(実印以外が良いかと)を押印した原本を本人、同原本のコピーを必ず会社保管、としてください。
本人が反省の態度を示しているようでしたら、再発防止策を本人に考えてもらい、期日を設けて会社に書面で提出させるのも良い手段(書面で提出命令)だと思います。
自分自身で考えた再発防止策を、その後遵守できたのかどうか、という証拠が残りますから。
※会社が教育指導した内容も、時系列で書面化できるようにしておいてください。
■5 その後の改善が見られない場合は?
上記の流れ+教育指導をしたうえで、改善しなければ、原則、次の流れになっていきます。
相応の懲戒処分(事案により複数回+相応の期間)
↓
改善なしであれば、退職勧奨
↓
退職勧奨に応じなければ、改めて同じように注意指導・懲戒処分
↓
改善なしであれば、解雇も視野に入れた退職勧奨
このような流れも、全て書面で証拠化します。
あってほしくはないですが、万が一、裁判などになったとしても、会社が正々堂々と当該問題社員へ適切な対応をしていたのだと主張できます。
とても労力のいることですが、多くの場合、ここまでやっていただければ、裁判などにはならず、退職に至ることがほとんどです。
■6 おわりに
最後に一言、問題のない社員さんが働きやすい職場環境を構築・維持していくのは使用者の重要な義務だと思います。
この記事は、問題社員の排除が目的なのではなく、上記の使用者の義務履行のためにご活用いただければ幸いです。
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