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身元調査はNG?バックグラウンドチェックはOK?

更新日:2023年7月18日

■1 日本一強気の労働法専門で使用者側の弁護士の先生の見解

私が社労士開業以来、常に参考書にしている同弁護士の先生の実務本に、「身元調査を含めた事前調査は、差別につながる可能性が高いため、絶対行うべきでない(趣旨)」とあります。

この見解を認識している私としても、身元調査は企業として避けるべきと考えています。

実際、大阪府・福岡県・熊本県などでは条例で禁止しています。


■2 身元調査が差別につながる事例として想定できるのは?

例えば出自(しゅつじ:生まれに関すること)は、差別につながる代表格だと思います。

他にも様々なプライバシー(思想信条、支持政党、労働組合活動歴など)がありますが、業務に関連しないもの(場合によっては関連が薄いものなど)は、差別につながる(つながりやすい)かと思います。


■3 差別につながる身元調査をした場合の企業のリスク

法的リスクもさることながら、一番怖いのは、SNSなどで「差別につながる身元調査をする会社という風評(身元調査を徹底しているということへの風評)」が立ち、「求人募集が極めて困難に、取引先との契約打ち切り、在籍者の離職など、結果、会社経営への大打撃」というリスクです。


■4 身元調査がだめなら、会社は採用段階で何も調査ができないのか?

そうではありません。

以前に取り上げましたリファレンスチェックも、身元調査という表現ではありませんが、事前調査であることは、間違いありません。

また、バックグラウンドチェックにおいては、ネットで文言の定義を調べますと「採用候補者の身元調査のことで、雇用調査や採用調査と呼ばれることもある(趣旨)」との記載を見かけます。

※リファレンスチェックは、バックグラウンドチェックのうちの一つの手法との位置づけのようですので、以下では、バックグラウンドチェックにリファレンスチェックを含んで述べます。


バックグラウンドチェックは、大手企業が商品化して行っているサービスでもあります。

では、上記■1から■3の身元調査と何が違うのでしょうか?

私の認識で整理をしますと、次のようになります。

(1) 身元調査は、差別につながる可能性の高い調査、又はその調査が含まれているもの

(2) バックグラウンドチェックは、企業の採用に必要な範囲での事前調査

つまり、企業の採用に必要な範囲を超えているものが差別につながるリスクのある身元調査だと言えます。


■5 バックグラウンドチェックについて、法律はどうなっているのか?

職業安定法

(求職者等の個人情報の取扱い)

第五条の五 公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、特定募集情報等提供事業者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者(次項において「公共職業安定所等」という。)は、それぞれ、その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

このように職業安定法は、基本的に業務の目的達成に必要な範囲でしか個人情報を収集してはならないとしていますが、「ただし書き」で本人の同意がある場合は例外が認められていますので、同意があるならばバックグラウンドチェックをすることも認められるという理解になります。

また、以前に取り上げました改正指針にもつながっていきます。


■6 同意の取得方法と内容(以前取り上げた内容は割愛します)

しつこいですが、同意方法は必ず書面取り付けとしてください。

この点は、以前も述べましたが、割愛しません(重要なため)。

同意内容としましては、私の方でひな型があるわけではないのですが、

(1) 履歴書等の応募書類に書いてあることをチェックする旨

(2) チェックの実施者が「自社または委託業者」であること

このような点がまずは、ぱっと思い浮かびます。


(2)は、法的に明示しなくても良いのですが、後のトラブル回避のため、書かないよりは書いておかれた方が良いと思います。


■7 まとめ

職種や役職にもよるかもしれませんが、バックグラウンドチェックはされた方が良いと思います。

ことあるごとに申し上げていて、くどいのですが、採用に労力とお金をかければかけるほどに、ミスマッチ雇用を防ぐことができ、結果として労務問題の発生リスクを抑えることができます。

しかし、わかっているけど多忙でできない、人を選んでいられない(応募がほぼない)など、苦しい事情が折り重なっているかと思います。

もしそうであれば、リスク覚悟で採用し、その後の労務管理でしっかり対応するしかありませんので、何かありましたらいつでもご相談ください。


★昭和の時代に回帰して、縁故採用を増やした方が良いと、ここ最近、私は強く思っております。

理由は、縁故のため労務トラブルリスクが低く、しかもコスパは最高で、リファレンスチェックのほぼ無料版と言っても良いほどだと思っています。


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