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競業避止義務を担保するためのちょっとした一工夫

  • info134084
  • 2023年6月1日
  • 読了時間: 3分

■1 競業避止義務違反とは

どのような就業規則のひな型でも、在職中はもちろんですが、特に退職後の競業避止義務条項を設けていることが多いです。

競業避止義務とは、退職後に一定期間、一定の場所で、一定の業務(辞めた従業員が在籍していた会社と競業する業務)に就かないようにする義務のことをいいます。

就業規則の条項に加え、退職時に競業避止義務に関する誓約書にサインをしてもらうことも多いかと思います。


■2 しかし、とても使い勝手が悪い競業避止義務

上記のような運用をしていたとして、実務上、果たしてどんな効果があるのかといいますと、個人的には、かなりの確率や度合いで、会社の期待と大きくかけ離れた、ほとんど役に立たない場合が多いと感じております。

裁判例もそのような内容がとても多いです(ここでは割愛いたします)。

不正競争防止法違反という観点もありますが、ともかく、会社が損害なり、違法行為なりを立証するのが、とっても難しく、極めてハードルの高いものとなっております。


■3 では、何のための競業避止義務規定や退職時の誓約書なのか?

個人的には、性善説に立ったうえで、お世話になった会社に対し、裏切り行為のようなことはしないでほしい、というメッセージ的なもの、と考えるようにしています。

「そんなの、生ぬるい、何を考えているんだ!」というお気持ちを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、職業選択の自由という憲法で認められている個人の権利を制約する競業避止義務が、果たして法的にどこまで認められるかは、事案ごとに全く違っており、●カ月ならセーフ、範囲も同じ都道府県ならセーフ、退職前の●業務に限定していればセーフ、就業規則の規定と誓約書があればセーフ、という線引きが極めて難しいのです。

しかし、上記がないと、競業避止義務違反を主張するのは難しいですから、上記は必須にはなってきます。


■4 では、他に何かいい対応策はないのか?

一つだけ、なるほど、と思った案をご紹介します。

とあるウェビナーで聞いた内容ですので、実際に自社で取り入れようとお考えのお客様は、事前に必ず私までご相談ください。

以下が、その案です。

【競業避止義務手当】

※ウェビナーで聞いた内容を記憶ベースで再現しておりますので、正確性はすみません。

  1. 一定の管理職などの重要ポストについている社員に対し、毎月「競業避止義務手当(金額までは不明)」を支給する。

  2. 支給前に、当該競業避止義務手当の支給申請書を当該社員に提出してもらい、会社はその内容を確認したうえで、競業避止義務と同手当についての誓約書を作成し、当該社員にサインをしてもらう。

  3. その後、会社は同手当を支給

  4. 在籍中はもちろんのこと、退職後に競業避止義務違反があった場合、競業避止義務手当の返還請求をして回収する。(前提には、退職時にも競業避止義務や同手当に関する誓約書等を取り付けておく)

  5. 上記のような流れであれば、法的に返還請求ができる可能性があり、参考にはなるとのウェビナー講師の感想


■5 私の個人的見解

初めて聞く競業避止義務に関する会社の取り組み案で、参考になりました。

合理的な競業避止義務内容であり、手当も相応となっていれば、案としては良いな思います。

競業避止義務について、ほとんどの会社が、被害を立証して損害額を確定させたりすることが難しい中で、事前に手当を支給しておき、支給要件を満たさないのに支給を受けていたから返還請求をする、というのは一つの手だなと思います。


ただ、在籍中ならともかく、退職者に対して返還請求をするとなると、結局弁護士等の費用が発生し、費用倒れになる可能性が十分にあります。

この点は、デメリットだと思います。

もっとも、競業避止義務手当をもらっていて、義務違反があれば返金しないといけないという抑止力が働き、何も手立てがないよりは、効果はあるように思います。

 
 
 

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