top of page

中小企業の雇用のミスマッチを防ぐには?

■1 労務問題は採用から防ぐ

何度も申し上げておりますが、労務問題は、法律論より感情論です。

感情のもつれから、法律論を持ち出され、労務問題に発展するパターンが非常に多いです。

では、なぜ感情のもつれが出るのか?

それは、経営者の方やマネージャークラスの幹部の方と、労働者との間で、相性の悪いところが増幅していくからだと私は思っています。

ですので、入社後に一緒に仕事をしていって、会社・経営者・幹部の3者と労働者との相性が合うか合わないか、これを採用段階で見極めていくことが、非常に大事だと思っています。

新卒者を除いて、仕事の能力がある、または期待できるのは当然として、「相性が合うか否か」は、労務問題を防ぐうえで極めて大事です。


■2 どのように見極めるのか?

採用面接時にだけ絞って申し上げますが、「良いところ探しをしない」ことです。

逆に、過去の問題社員やすぐやめていった社員などを思い起こしていただき、そのような人と似ているかどうか、会社・経営者・幹部の3者と「相性が合わないところがないか探し」をしていただくのが有効だと思っています。


お金をかけて求人をし、やっと応募があり、これでやっと人員補充ができるかもと思って面接をすると、結構な確率で「どんな人?→まずまず?→いやいやいける?→いけそうだ!→→いけるいける!→この人なら大丈夫!」という、採用側の期待感に沿った思考になってしまうことが多いと思います。

この心理のたとえ話はモラルに問題がありますので、直言はしませんが、要は、採用側の期待に沿った良いところ探し(加点法)をして、誤信してしまうのです。


逆に、「相性が合わないところがないか探し」をメインにする(ダメな箇所確認の消去法)をしていけば、誤った判断にはなりにくいと思います。

過去の嫌な事案を思い起こしていただき、そのような人でないかどうかの確認です。

良いところを見出していくのも大事ですが、会社の一員となって、果たして問題を起こさずやっていけるのかどうか、それが大丈夫だとすれば、あとは会社の期待にどれだけ応えてくれるだろうか、この順番で面接時の様々な質問をすべきです。


■3 面接時の注意点

本籍や労働組合活動、HIVや肝炎の有無などは聞けませんが、業務上の必要性がある場合、応募者に黙秘権を与えて、いろんなことを質問すべきだと、私は考えています。

明らかに法的にアウトのことは質問してはダメですが、それ以外の悩ましいところ(グレーゾーンと言っても良いかと)は、「業務上の必要性がある」のであれば、聞いておかないと、採用後に新たな事実がわかっても、なぜ採用面接段階で確認しなかったのか、確認しなかった会社に落ち度があるではないか、よって本採用拒否は違法、となりかねないと思っています。


■4 雇用のミスマッチ回避の努力の方が、よっぽどマシ

一度採用したら、会社が解雇するのは、とても大変です。

万が一、ユニオンや弁護士に関与されての解雇紛争となれば、相当の労力・時間・お金がかかります。

そのようなトータルコストを考えたとき、「喉から手がでるほど採用してしまいたい!」と思っても踏みとどまれるかと思います。

そして、新たな人材を求めてお金を出して求人を出し、人手不足は在籍者の残業でなんとか乗り越える、という方がよっぽどトータルコストは安いと思います。


■5 まとめ

良いところ探しをしてはいけないのではありません。

相性が合わないところがないかどうか(私はダメダメ探しと言ってます)の確認は、必ずやっていただきたいのです。

良いところ探しは、どうしても前のめりになりがちです。

一方、ダメダメ探しは、淡々としやすく、判断を誤ることも少ないのではと感じております。

最新記事

すべて表示

ゆるブラック企業とは?20代はどうみている?求職者が選ぶ労働条件とは?

■1 ゆるブラック企業とは? 社労士の会報で見かけた言葉で、私自身は、初めて目にした言葉です。 記事によりますと、ゆるブラック企業とは「仕事は楽だが、成長できず収入も上がらない企業」を指すようです。 なんとも言えない定義ですが、このとらえ方を「わがまま」と認識しない方が良い世の中に変貌してきたのかなと感じてしまいました。 ■2 20代は「ゆるブラック企業」をどうみているか? 「ゆるブラック企業だか

季節性インフルエンザへの会社対応(令和6年アップデート版)

■1 季節性インフルエンザで休んでいいよと言ったら? このような会社の言い方ですと、「雪が予測されるから早く帰っていいよ」という言い方と同じ理屈で、100%の賃金支払い義務が会社に発生する(就労免除のため)と、私はこれまでご説明してまいりました。 この点は、基本的に変わりません。 笑い話として「じゃんけんと同じで、先に出した(上記の場合は、先に言った)方の負け」と、いろんなところで申し上げてまいり

自社での降格と降職の違いは区別すべき

■1 降格は学説・裁判例・弁護士の見解により様々 1-1学説 労働法の権威で学者の菅野和夫先生の「労働法(第十版)」510項(弘文堂)」で、 降格には ・役職や職位を引き下げる降格(昇進の反対)を指す場合 ・職能資格制度における等級を引き下げる降格(昇格の反対)を指す場合 があり、 また、 ・人事権の行使として行われる降格 ・懲戒処分として行われる降格 があるとされています。 1-2裁判例 使用者

bottom of page