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配置転換の注意点(基本編)

更新日:2021年7月1日

■1 まず会社に配置転換の命令権があるか

現時点においても、日本の労使関係は長期雇用(終身雇用)を前提としているのが一般的ですから、就業規則の一般的なひな型でも、「会社は業務上の必要性により配置転換を命じることがある」という旨の規定があるのが大多数かと思います。


しかし、要注意なのは、

・就業規則を適切に周知している

・雇い入れ時の労働契約書(雇用契約書)に、配置転換する旨の記載を確実にしている

ということができていないと、いざ配置転換を命令した際、トラブルになることがあります。

つまり、上記2点が適切にできていないと、会社に配置転換の命令権の根拠がなく当該配置転換は無効だと主張されると、会社としては反論が苦しくなります。

以下、上記2点を少し、掘り下げてみます。


■2 周知は本当に適切にできているか

世の中では、まだまだ就業規則を適切に周知できていない会社が多いと思います。

その存在自体を、従業員全員が知らないケースもあると思われます。

また、会社としては周知しているつもりでも、その周知自体が足りない場合もあります。


わかりやすい例としては、労務担当部長のデスクに鍵をかけて保管しており、部長の許可がないと、一切閲覧できないなどです。

(10年以上前は、社長室の金庫に鍵をかけて保管しているケースもありました。)

就業規則が周知されていない、または周知が足りなければ、労働契約の内容とはならない、または契約順守を迫りにくい、となってしまい、結果、配置転換ができないことにつながりかねません。


私がベストだと思う周知は、従業員全員への就業規則の配布です。

従業員は当然として、仮に第三者にみられても、特に問題にならない就業規則なら、配布しても良いと思っています。

ただ、わざわざそこまでする必要もないと、何年か前から考え直しておりまして、例えば、労働契約書に「就業規則は、●営業所(所在地●)正面入り口わきの掲示板に吊るす形式で周知している」というような一文を入れておき、周知性の争いになった時の証拠にできれば良いかと考えています。


周知していても、「そんなところにあるとは知らなかった、聞かされていなかった」などと、もめる人は言ってくるものですから、最初から、契約書に周知場所・方法を記しておいた方が良いと考えています。


■3 労働契約書(雇用契約書)への記載は問題ないか

配置転換のご相談をお受けする際、契約書の記載をご確認いただいております。

「勤務地変更や職種変更等の配置転換をすることがある」旨が、契約書に書いてあるか否かです。

書いてあれば、適切に周知された就業規則とリンクした労働契約書という前提で、配置転換の命令権はありますが、明記していないと、もめる可能性があります。

就業規則と労働契約書とを比較して、労働者に有利な方が適用(労働契約法)になりますし、そもそも命令権の根拠が足りないという議論にもなるからです。


「仕事内容は●、勤務地は●」だけの契約書だと、いわゆるジョブ型雇用(勤務地・職種限定特約の雇用)と解釈される余地は十分にあると考えています。

逆に、ジョブ型雇用で採用する場合には、職務内容と勤務地を限定し、その職務と勤務地だけの契約内容にすべきです(本来は職務定義書等にまで踏み込むべきかと思いますが、ここでは割愛します)。


■4 おわりに

配置転換の注意点(基本編)を述べさせていただきましたが、もし改善された方が良い点が自社に存在するということでしたら、今後の配置転換の実施までに改善なさってください。

他にも、配置転換の命令が、「業務上の必要性を欠く、労働者に著しい不利益になる、不当な動機・目的がある」となりますと、権利濫用として無効になる可能性が高くなりますので、十分注意が必要です。


配置転換は、もめると労働組合などを結成されたりして、紛争が泥沼化することがあります。

その理由を私なりに推測しますと、「会社を辞めるつもりがないため配置転換を無効(不当な動機・目的等で権利濫用)だと主張し、結果、会社に在籍のまま労務問題化するから」だと思っております。

※不当な動機・目的と認識されている点だけみても、会社との関係は極めて良くない状況かと思います。


もめない配置転換が良いに決まっていますので、まずは基本を押さえていただき、その他につきましては、嫌な予感や迷われる場合はご相談ください。

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