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休職後の復職時における一定期間の労働条件の変更実務

更新日:7月18日

今回は、最近ものすごく多いご相談事案を取り上げます。

休職していた従業員が復職をした際、従前の業務は無理でも「一定期間の軽減業務を経てなら就労可」という趣旨の診断書が出ることが極めて多いです。

そこで、テーマとしましては、「休職後の復職時における一定期間の労働条件の変更実務」として述べたいと思います。

繰り返しになりますが、ものすごく多いご相談ですので、是非お読みください。


■1 本当に多い業務軽減事案

一番多いのが、タイトルどおり、休職後の復職時なのですが、ここ数年、倍増してきた感じがあります。

メンタル不調の方、その他さまざまな疾患に関するご相談が非常に多くなっております。

休職とまではいかないまでも、そのまま今の業務を続けてもらうのもリスクが高いという事案も結構多くなっております。


■2 会社はどこまで配慮が必要か?

有名な最高裁判例に、片山組事件があります。

https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/07115.html

<引用:公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会HP>

【判決文抜粋】

「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」

判決文の主なポイントは以下のとおりで、これが企業規模に応じて業務軽減の配慮を課せられる論点です。

(1) 職種限定ではない労働契約で

(2) 企業規模がそれなりで

(3) いろいろ検討して配置転換可能で

(4) 本人が働きたいと申し出ているなら

(5) 上記(1)の労働契約の内容に沿っている

上記に該当するなら、従前の業務ができないからと言って退職扱い等にはせず、軽減業務で働かせなさい、ということになります。


■3 軽減業務なら就労可との診断書への対応

主治医面談は必ず行っていただきたいのですが、今回はその点は割愛します。

主治医面談等を踏まえ、軽減業務を話し合い、本人と合意できた場合、軽減度合いや従前の業務に紐づいていた手当カットなど、賃金も減額すべきと私は思います。

なぜならば、軽減業務でも賃金が変わらないのなら、他の従業員との公平性に問題が生じますし、それでも賃金が同じなら、今度は他の従業員が何らかの理由で軽減業務を求めてくるかと思います。

そうなりますと、企業として業務が成り立ちませんし秩序も維持できませんので、ここはやはり、軽減度合いに応じた賃金の減額をすべきと考えます。

労働条件の中で一番重要な賃金に絡む変更ですから、よく話し合いをしていただき、合意内容を必ず書面にすべきです。


■4 賃金変更の合意は口頭では危険か?

極めて危険です。

合意(同意)のない労働条件の不利益変更は無効になりますから、必ず書面で合意内容を交わすべきですし、その前段の話し合いは丁寧にすべきです。

※話し合いの前に、主治医の「軽減業務が必要との診断書」は取り付けるべきです。

話し合いの内容も記録化しておいた方がよいですから、会社側は二人で対応し、一人は書記係として話し合いの内容を記録すべきです。

その他の記録の残し方もありますので、必要に応じてご相談ください。

※令和5年5月末現在、新規のご契約を一時停止させていただいておりまして、ご契約を承れるようになり次第、ご相談をお受けいたします。

※新規のご契約再開時期は未定で、再開次第、下記フッダー欄にてご案内させていただきます。

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