今回は、実務でかなりトラブルの多い中途採用者について、「中途採用者の試用期間はとても重要」というテーマで述べたいと思います。
■1 悩ましい中途採用
コロナ禍ではありますが、慢性的な人手不足感は否めません。
中小企業の場合は特にですが、中途採用者を積極的に採用していかないと、会社経営がしづらいと思います。
しかし、労務問題が起きやすいのは、かなりの高い確率で、中途採用者(正社員)です。
それも、年齢が高ければ高いほど、発生率や深刻度が高くなる傾向にあると実務で感じています。
できれば新卒者だけの採用にしたいところですが、そうは言っていられないという、とても悩ましい問題が、中途採用なのです。
■2 中途採用者と揉める典型的パターン
応募書類や採用面接でアピールしていた中途採用者の能力が、実際に採用した後、ほとんど発揮されない、またはかけ離れた能力しかない、というパターンが揉めるケースでとても多いです。
ほとんどの企業が試用期間を設けていますが、まれに、中途採用者の雇用契約書などに「試用期間なし」としている場合があります。
そうなると、雇用契約を終了する場合、本採用拒否ではなく、いきなり解雇のハードルを課されてしまい、会社としては非常に苦しくなります。
※試用期間での本採用拒否も、解雇とほぼ同じハードルの高さですが、日本人の常識として「試用期間でダメ出しなら仕方がない」という法的勘違いを労働者側がして、結果、問題になっていないケースが多いです。
■3 どうすれば揉めにくい?
中途採用者が応募書類や採用面接でアピールした能力を、試用期間中に具体的数値目標を掲げ発揮してもらい、その数値目標が達成されない場合は本採用拒否をする旨、雇用契約書に是非明記してください。
曖昧な書き方ではなく、具体的にです。
わかりやすい簡潔な例で申し上げますと、「●の営業目標:月間売上●万円以上とし、この営業目標を3か月間の試用期間中に達成できない場合、本採用を拒否する」という趣旨の内容を雇用契約書に入れるべきです。
■4 具体的な数値目標を入れてない場合はどうすればよいか?
中途採用者の雇用契約書には、是非とも具体的な数値目標を入れていただきたいのですが、すでに採用済みで雇用契約書に記載していない場合もあるかもしれません。
そういう場合、就業規則に試用期間の延長規定があれば、それを活用し、「3か月での試用期間では本採用の可否を判断できないので、もう●か月(長くても同じ3か月程度かと)試用期間を延長し、貴殿が月間●万円以上の営業目標を達成できるか否かの機会を与えます。会社としても貴殿の営業目標が達成できるよう、できる限りの支援等をいたしますので、積極的に会社にご相談ください。また、営業目標達成のための担当者として、●課長を貴殿の支援担当者に選任し同行営業等もいたしますので、是非頑張ってください。」というような書面を出して、延長期間での様子をみて、どうしても営業目標が達成できなさそうであれば、早めに話し合いの機会をもつなり、準備を整えて退職勧奨をする、という流れが良いと思います。
■5 雇用契約書に具体的目標がない場合、本採用拒否で勝負は危険
本採用拒否は、解雇とほぼ同じです。
能力不足の解雇は、日本ではとても難しいです。
よって、採用時点で、試用期間での具体的数値目標達成が労働契約の内容になっていない場合、本採用拒否はほぼ難しいとご認識ください。
ですので、上記■4のような対応をせざるを得なくなってきます。
上記■4では、試用期間を延長し、かつ会社の教育指導体制もきちんと設けたうえでのことですので、目標不達成の場合、退職勧奨に応じる可能性は高くなると思います。
もし応じない場合、本採用拒否はリスクが高いですから、やむなく本採用をして、そのうえで1年ほど同じ教育指導体制でご本人が能力が発揮できるようになるか否か見極めて、それでもだめなら退職勧奨をもう一度する、という流れがベターだと思います。
■6 まとめ
職種にもよりますが、中途採用者の場合、具体的数値目標を設けられる業務であれば、是非とも雇用契約書に「試用期間中の具体的数値目標達成と、未達の場合は本採用拒否」を入れるようにしてください。
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