2021年4月施行改正高年齢者雇用安定法

更新日:2021年7月1日

■1 どのような改正内容か?

改正高年法では、70歳までの就業確保措置として、下記のいずれかの措置を講ずるよう、事業主に努力義務を課しています。

(1) 70歳までの定年引上げ

(2) 70歳までの継続雇用制度の導入

(3) 定年の定めの廃止

(4) 就業支援等の措置の導入

以下、(2)と(4)について、そのポイントに触れていきます。


■2 あくまで努力義務

努力義務であり、実施義務まではありません。

しかし、法律改正のパターンとして、まずは努力義務とし、何年か様子をみて実施義務に切り替えていくケースが多いです。

とりあえず努力義務ですので、実施を急ぐ必要はありませんが、コロナ後の経済活動の活発化と日本の構造的な労働力不足は避けられませんので、会社の10年20年先を見据えた展望を踏まえ、まずは、少しずつでも対応策を検討された方が良いと思います。


■3 一番多いパターン(私見)

現在の65歳までの雇用確保措置(「就業」ではなく「雇用」です)で、一番多いパターンは、60歳定年後の再雇用です。

※就業→改正高年法の就業確保措置の「就業」にリンクしており、改正高年法では「雇用」確保とは言っていないのです。

※そして、上記■1(4)を新たに設け、義務の範囲を雇用に限定せず、緩やかに広げたのです。

おそらく、改正高年法が実施義務まで引き上げられても、同じく、定年後の再雇用パターンが一番多くなる気がします。

シンプルですし、現時点よりも労働力不足の状況にもなるでしょうし、医療の発達や健康意識の更なる高まりで、65歳超でも働ける方はそれなりに多いでしょうから。

ホワイトカラーの職種でしたらその傾向は顕著でしょうし、ブルーカラーの職種であっても、そのようになる可能性が高いように思います。

ブルーカラーの職種の場合は特にですが、頑健な身体であれば頑張ってもらい、そうでなければ、働く方から、仕事継続が困難と思われた時点で雇用関係を終了したい旨を申し出る気がします。


■4 改正高年法の会社側の最重要事項(継続雇用制度導入を選択した場合)

私が考えるこの法律の肝は、希望する従業員が70歳まで働ける制度の導入であって、会社に対して、従業員の個別の希望にそった労働条件を提示する必要まではないということです。

そのため、会社が合理的な範囲で条件提示をしていて、従業員と会社との間で条件等について合意にいたらず、結果的に従業員が会社の条件提示を拒否したとしても、この法律に違反することにはなりません。

ただ、「合理点」というのがどの程度なのか、ということに注意が必要で、これまでの裁判例を参考にしながらですが、「それはやりすぎでしょ」というのは通らないと思います。

明らかに通らないと思う裁判例には、「トヨタ自動車事件・名古屋高裁H28.9.28」があります。


■5 注意を要すると思われる論点

上記■1(4)を選択し、個人事業主として業務委託契約を結ぶような場合には、注意が必要です。

65歳までやってもらっていた業務等は全くかえず、雇用契約は終了させ、かわりに業務委託契約を締結して個人事業主として引き続き同じことをやってもらう、というケースです。

以下のURLのQ&A「4 創業支援等措置の導入の17番」において、法律の趣旨に反すると言っておりますし、労災事案になった場合などで「労働者性」のトラブルが頻発すると思われます。

年齢が高いですから、相応に業務中の傷病は発生すると思います。

高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)全文は以下のURLをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11700000/000689973.pdf


■6 まとめ

各企業において、現時点で上記■1(1)〜(4)のどれが自社にとって良い選択肢となるのか、コロナ後にはある程度道筋がつけられるよう、業務の点検・見直し等をなさっていただければと思います。

確実に言えることは、「労働力人口が減る」「社員の平均年齢が上昇する」「どうしても採用が苦しい場合は、派遣にコストをかけるか、労務リスクを想定しにくいのを覚悟のうえで外国の方を雇うか、という判断を迫られる時期はそう遠くない」ということです。

そのため、個人的には、■1(2)70歳までの継続雇用制度の導入が、より無難で現実的な選択肢になるように思います。

最新記事

すべて表示

■1 会社が労務問題に勝利したら何か得をするか? いろんな評価がありますが、労務問題を解決した「まさにその瞬間」に、会社が経済的に何か得をすることは、基本的にありません。 なぜなら、労働者に対して損害賠償請求ができたとしても、その金額を上回るコスト(弁護士費用など)がかかっていたり、損害の全額を請求するのは困難(会社は労務提供で利益を得ているという考え方から、損害の概ね25%しか労働者に請求できな

■1 労務問題は「諸行無常の響きあり」? 有名な平家物語の冒頭のことばに、「諸行無常」とあります。 私の言葉で申しますと、「もろもろの事柄は、常に変化をしていく」という意味合いかと思います。 労務問題も同じことが言えます。 使用者も労働者もお互いに人間ですから、常に目まぐるしく変化をしていきます。 ですので、労務問題の類型化まではできても、同じように対応しておけば問題ない、ということはかなり少ない

■1 はじめに ― 解雇もできない、賃下げもできない悩み この悩みがない企業は、ほぼ皆無だと思います。 労働者保護が極めて強い日本において、能力不足・問題社員であっても解雇は極めて困難、賃下げも法的に同意がないと実質無理、しかし放置はしておけない、このようなお悩みを抱えている経営者の方は、無数にいらっしゃいます。 このようなお悩みに明るい一筋の光(最近の裁判例)がありますので、以下にその一端とキー