残業時間は何分単位で集計?知らないとどんなリスクがあるのか?

何も知らずに問題が表面化すると思わぬリスクに巻き込まれる

1 はじめに

残業をさせた場合、当然割増賃金を支払わなければなりません。

その割増賃金の計算をする際、どれだけの残業時間があったのかが不明ですと適正な残業代は算出できません。

では、そもそも残業時間は何分単位で集計しなければならないのでしょうか?

答えは、1分単位です。

この答えをご存知の方は多いと思うのですが、いろんな理由や事情等で、例えば、1日あたりの残業時間15分未満を毎日切り捨てているというケースも散見されます。

意外にご存知なく、周りがみんなやっているから問題ないのではとの認識などで、切り捨てているケースも見受けられます。

2 端数処理の誤った認識

なぜこのようなケースが発生するのかを考えたとき、もしかすると割増賃金計算の端数処理の通達を、違う解釈で認識してしまっているのが理由の一つかもしれないと感じます。

通達(昭和63年基発150号)では、「1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切捨て、それ以上を1時間に切り上げること」を、違法ではないですよと言っています。

あくまで、1ヶ月の合計と言っており、1日あたりとは言っていません。

従いまして、1日あたりの残業時間の端数処理は問題になり、1日あたりは1分単位で集計し、1ヶ月の合計での端数処理だけはしても良い、となります。

 

個人的には、端数処理はせずに、1分単位の原則的な計算の方が良いのではと思っています。

「時間外労働(1.25割増)、休日労働(1.35割増)及び深夜業(0.25割増)の各々」で端数処理を考えるのも面倒な気がしますし、実労働時間に対して実際の賃金を払うという原則がシンプルで良いと思っています。

3 端数時間カットの場合の未払い残業代試算

仮に、1日あたり15分の残業時間(時間外労働1.25割増の時間が前提)を切り捨てた場合、いくらの未払い残業代が発生するのか単純計算してみます。

なお、未満を前提に計算すると複雑ですので、15分ぴったりで計算します。

※15分未満切り捨てで計算した場合、まずは下記例示金額より少なくなりますが、基準内賃金はもっと高い場合が多いでしょうから、最終的には例示を上回る金額になるケースがかなりあると思います。

【おおまかに、基準内賃金は時給換算1,000円、1ヶ月22労働日、従業員40人の会社と仮定】

15分×22労働日×40人×1,000円×1.25=275,000円/月

未払い残業代の請求は2年間さかのぼれますから、

275,000円×24か月=660万円

となります。

4 労務問題のきっかけになる

間違った認識での端数切り捨てがあった場合、このような未払い残業代が計算できるわけですが、日ごろ従業員から特に文句も出ず、労基署にも入られたりしなければ、問題が表面化することはそれほど多くはないのかもしれません。

しかし、何かがきっかけとなり、従業員が労基署に申告をしたり、労働組合に相談に行ったりすると、一気に労務問題に発展します。

このパターンは、実務でよく見かけるケースです。

5 労基署の場合

労基署は労働者の申告を受け、会社に労基法違反の疑いがあれば、基本的には動きます。

監督官が突然会社に来訪し、洗いざらい会社の資料等をみて、他の法違反も多々あり悪質だとの判断に傾けば、従業員全員分の未払い残業代を2年間さかのぼって支払いなさいとの是正勧告を受けることはあります。

ほんの15分の残業時間カットだけで、例として挙げた金額は660万円ですから、他に根本的な労働時間管理ができていなかった場合、金額はかなり高額になるケースが多いです。

6 労働組合の場合

労働組合に相談に行った場合、このような残業時間15分カットは、組合側の格好の主張材料になります。

そもそもの相談内容が残業時間15分カットではなく、ハラスメントやその他の事案であっても、未払い残業代の有無はセットで確認されます。

「残業時間の端数処理がおかしい、着替えの時間を労働時間としない、開店準備を労働時間としないなどは問題だ」というのは、本当によくある労働組合側の主張です。

7 まとめ

残業時間15分カットをした場合の嫌なケースを述べましたが、残業時間の集計にはお気を付けいただきたいと思います。

細かいお話なのですが、細かいところからほころびが出始めて、大きな問題に発展していくのも労務問題の特徴です。