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雇止めと解雇は法律上違うもの?それとも同じ?
雇止めとは、例えば1年間という期間を定めた有期の労働契約(以下、「有期労働契約」といいます)を、契約期間満了日で契約終了とし、それ以降の契約更新をしないこと(会社が更新を拒否すること)を意味します。
1 解雇と関係のない適切な雇止め
入社時に1年間の有期労働契約と確定していて、そのような労働契約書になっており、有期労働契約の就業規則にも不備はなく、労使ともに当該契約内容を合意していれば、1年間の期間満了で雇止めをしても、基本的には問題ありません。
また、複数回にわたり契約更新をしていても、入社時から更新上限をきちんと説明し、労働契約書や有期労働契約の就業規則にも不備なくその旨の記載・規定があり、労働契約法による無期転換権を行使できる前に雇止めにするならば、他のマイナス要因が会社にない限り、これも問題になることはほぼありません。
上記のような適切な雇止めは、法律上、解雇とは関係がありません。
2 雇止めでもめるケース
一方、会社の有期労働契約の管理がラフであれば、ケースによってはかなりもめます。
以下が、典型的なケースです。
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有期労働契約をもう何年も更新し続けてきた。
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入社時だけは労働契約書か労働条件通知書を、取り交わしたか通知した記憶がうっすらとあるが、その書類を今はもう存在すら確認できない。
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契約更新の際、特に労働契約書など書類をもとにきちんと更新手続きをしたわけではなく、お互い暗黙の了解で更新しており、自動更新してきた。
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入社時や更新時などに、会社側から「特に問題なければ長く頑張ってもらいたい、うちの会社の他の有期労働契約の人たちも多くがそのようにやってもらっている」という話を本人にしていた。
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当然、有期労働契約用の就業規則もない。
新規でご相談をお受けする場合、このような状況になっている会社さんは非常に多いです。
新規のご相談時に、会社さんに全く問題がなかったという事例は、一度もありません。
雇止めでもめる典型的なケースが存在する会社さんに共通しているのは、自社だけで労務管理全部をやっている、または手続き・給与計算・助成金等を主に依頼している社労士の方はいるが、有期労働契約の労務管理に必要な、適切な助言指導を受けられていない、という実態です。
3 ほぼ確実に雇止め無効
このようなケースは、雇止めに不満や不信をいただいた労働者がどこかに相談に行けば、会社としては、かなり苦しくなります。
というより、ほぼ確実といってよいぐらいに、会社側の雇止めは無効となります。
なぜかといいますと、過去に上記のようなケースが争点になった裁判例が積み上げられ、その判例が法律の条文として規定化され、上記のような雇止めは無効となることが明確になっているからです。
4 雇止め法理の法定化
ここで、その法律条文を引用します。
労働契約法(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
5 無効になる雇止めをまとめると
少し長い条文ですが、簡単にその意味をまとめますと、次のような有期労働契約に該当する場合は、雇止めを無効とするということです。
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過去に何度も更新された有期労働契約で、その雇止めが正社員の解雇と社会通念からみて、同じようなものだと認められるもの
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従業員側が、有期労働契約の期間満了後も引き続き契約が更新されるはずだと思うことに、道理や論理にかなっている理由(※)があると認められるもの
※入社時から雇止めに至るまでに、どのような事情があったのか、総合的に判断されます。
※会社からの長期雇用の期待をいただかせる発言などは、よく争点になります。
6 雇止めできない場合、解雇と同様の法規制
このような有期労働契約に該当する労働者を会社が雇止めすることは、法律上、正社員の解雇と同様となり、会社にとって非常に厳しい解雇規制が類推適用されます。
会社は、解雇と同様の非常に高い法律上のハードルを越えない限り、雇止めはできないということになります。
7 世の中の実態
もめる雇止めに該当してくるケースは、世の中にたくさんあるのが実態だと思います。
それが問題になるのは、裁判、弁護士や労働組合などに関与されたときです。
これまで問題になったことがないから大丈夫なのではなく、争いになったことがないから、結果として問題として認識する場面がなかったというのが本当だと思います。
手続きや給与計算等を依頼している社労士の方に、別途有期労働契約の労務管理のための労働契約書等を依頼され、最低限のものをお持ちの場合もありますが、私はこれまで一度も問題ないケースを拝見したことがありません。
8 争いは時間とお金が非常にかかるため、防止するのが基本
いつ、どこで、誰が、どのような争いを起こすかは、相手があることですから、わかりません。
しかし、有期労働契約の更新などを漫然とやっていては、いつかは自社でも争いが起こる可能性が高いとご認識いただいた方が良いと思います。
争いになれば、解雇裁判と同様の時間と弁護士費用等が必要でしょうし、退職和解が前提の場合では、金銭支払いなども、正社員と比べると低額になる傾向ではありますが、当然、用意しなければならないです。
もし雇止め無効で本人が復職を求めたら、本人が望むまで雇い続けなければならないという事態も発生するため、有期労働契約の従業員の定年の規定等も、別途考えていかねばなりません。
訴訟まで起こした本人との話し合い等も含めた難しい対応が必要となってきますので、やはり、争いを予防するのが会社にとっては最善の策だと思います。
争いを防ぐには、その可能性となる原因を一つずつ解消していくしかありません。
一番のベターな選択は、これらを解消するための具体策について、労務問題を専門にし、トラブル回避の経験が豊富な弊事務所までご相談いただくことかと思います。
早いうちに、できることから、一つずつ対応していくのが、労務問題を未然に防止する基本中の基本になります。