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定額残業手当否定裁判例

1 テックジャパン事件(最判平成24年3月8日)

1-1給与明細にまで定額残業手当の時間数と額を明示していますか?

この事件では、判決内容ではなく、櫻井裁判官の補足意見をご紹介します。

この補足意見以降、従来の定額残業手当制度に対する厳しい判決が出始め、実務に影響を与えたと言われています。

1-2 補足意見のポイント

  • ポイント1:時間外労働の時間数及びそれに対して支払われた残業手当の額が明確に示されていること

  • ポイント2:通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別し得ること

  • ポイント3:(定額残業手当が)雇用契約上も明確にされていなければならない

  • ポイント4:支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていなければならない

  • ポイント5:(残業時間数が定額残業手当分を超過した場合は)別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならない

 

2 アクティリンク事件(東京地判平成24年8月28日)の要旨

営業手当は残業代ですか?差額支給をしていますか?

営業手当を30時間分の割増賃金相当分として支払う旨の規定があった事案。

営業手当は、顧客と面談する際の諸経費をまかなう趣旨を含んでいたこと、一種のインセンティブとみるべきであることから、実質的に見て時間外労働の対価としての性格を有しているとは認められない。

30時間を超えた場合の残業代の追加支給の形跡がなく、営業手当は定額残業手当として無効。

3 ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高判平成24年10月19日)の要旨

残業設定時間が長すぎませんか?

調理人、パティシエである従業員に支給していた95時間分の職務手当(定額残業手当)を無効とし、45時間分の定額残業手当としては有効と判断。

差額の清算をまったくしておらず、95時間を超える残業が発生しても差額を支払う意思がない定額残業手当は無効。

旧労働省平成4年告示第72号に定める36協定の上限時間である45時間を超える定額残業手当の設定は、長時間労働の義務付けになり無効だが、45時間までの合意は有効と判断。

4 木下工務店事件(東京地判平成25年6月26日)の要旨

割増賃金率の区別はどうなっていますか?

基本給と調整給の40%(ないし35%)を超過勤務・深夜勤務・休日勤務手当とする記載が給与規則と労働条件通知書にあった事案。

被告は、e(元従業員)の給与の40%が85時間相当のみなし残業代であったと主張するが、被告の主張する計算式には、休日・深夜・月60時間超の割増が考慮されていない。

給与の40%に相当する時間外労働時間は、休日・深夜・月60時間超の時間がそれぞれ何時間あったかで変動するものであって、給与規則の規定だけからは、給与の40%に相当する時間外労働時間を確定することができない。

したがって、割増賃金に当たる部分がそれ以外の賃金部分と明確に区別されているとはいえない。

また、仮にeが給与の40%がみなし残業代であることに納得していたとしても、無効な給与規則に基づくものである以上、その合意も無効。

5 ここまでお読みになられて、御社の定額残業手当はいかがですか?

  • ここでご紹介した裁判例はごくわずかですが、否定例の一部でも該当していませんか?

  • 該当するということは、御社の定額残業手当が無効になる可能性が高いということです。

  • 該当している場合は、早急な見直しを強くお勧めします。

  • なぜなら、無効になった定額残業手当には1円の残業代も含まれていないことになり、もし未払い残業代請求をされると、多額の支払いをしなければならない可能性が高いからです。

  • 上記の場合、定額残業手当の全額が残業代計算の基礎賃金(基準内賃金)になるため、残業代単価が跳ね上がります。

  • 【具体例】※前提として、法定休日労働と深夜労働自体はないものとしています。

  • 毎月45時間分の従来型の定額残業手当を支給し、実際の残業時間数も45時間と仮定

  • 基本給(1時間あたり1,000円)

  • 現行の従来型の定額残業手当(1時間あたり1,250円→残業代ではなく基準内賃金)

  • 基準内賃金の合計が、1時間あたり2,250円となると

  • 2,250円×1.25×月45時間×24ヶ月(請求権あり)=3,037,500円/一人あたり

  • ここでご紹介している各事件の各論点をクリアーしなければ、裁判所などの司法の場(弁護士との任意交渉含む)では厳しいです。

  • いろんなインターネット上のサイトで定額残業手当の情報発信がされていますが、上記各事件の各論点をクリアーしている内容を、私の知る限りでは、見かけたことがありません。

  • とくに、木下工務店事件への対応策は、一度も見たことがありません。

  • つまり、従来型の定額残業手当制度しか見当たらないということです。

  • 弊事務所では、上記各事件の各論点に対応した新・定額残業手当制度の導入サービスをご用意しております。

  • この新・定額残業手当制度の導入サービスには、弊事務所が社労士業界の中で真っ先に取り組んできた長い経験と実績があります。

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