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始業と終業をめぐる労働時間の司法判断
1 始業前の打刻から労働時間になるのか?
原則、労働時間とはなりません。
例えば午前9時始業の場合、9:00ぴったりに打刻している人はほとんどいないはずで、始業時刻の少し前に打刻するのが通常です。
裁判例には、
始業時刻よりも前の打刻については、(中略)特別の事情が認められない限り、始業時刻をもって業務開始時刻と認めるのが相当(H25.2.28 東京地裁判決 イーライフ事件)
始業開始前の出勤時刻については余裕をもって出勤することで始業後直ちに就業できるように考えた任意のものであったと推認するのが相当(S63.5.27 東京地裁判決 三好屋商店事件)
というものがあります。
ただし、早出残業を余儀なくされる事情があったり、早出残業を黙認している場合などは、話が変わってきます。
2 終業時刻についての裁判例
タイムカードの機械的時間把握機能から、タイムカード打刻時刻と労働時間に関し、使用者が構内に労働者は滞在していたが労働していなかった旨反証をあげない限り、その時刻近くまで働いていたとして労働者から請求されたときは、タイムカード打刻の結果によって把握される時刻を前提に労働時間として取り扱わなければならないという推定が事実上働く。(H10.9.16 東京高裁判決 三晃印刷事件など)
上記は、よくもめるケースです。
使用者は、労働者が終業の打刻をする前の時間について、「労働していなかった」という反論の証拠を出せないと、労働時間として推定されてしまいます。
そうであれば、そもそもタイムカード等の記録がない方が良いのではというお話になるのですが、労働者側の「仕事が終わったから今から家に帰るよメール」や「手帳の記録」、最近では「残業代請求アプリ」もあり、これらを基に労働時間だと主張されたときに、会社側として「労働時間ではない」と反論する証拠を出すのが困難です。
記録がありませんので、証拠の出しようがありません。
やはり、終業時刻は記録として残しつつ、打刻前の労働ではない時間があれば、会社は労働者に訂正させ、注意指導していくのがベターだと考えています。
そうしないと、労働者側だけの主張がほぼ通るという事態になりかねません。
3 残業申請許可制の場合でも業務を止め退出を指示しない限り労働時間
注:原告は労働者で、被告が会社
原告らが大阪店で時間外に被告の業務を業務上の必要性に基づいて行っている以上、労働申請とその許可が必要であるとの被告の運用にかかわらず、原告らに対して、業務を止め退出するように指導したにもかかわらず、あえてそれに反して原告らが労働を継続したという事実がない限り、(以下、省略)。(H24.12.21 長野地裁判決 アールエフ事件)
とても厳しい判決です。
残業申請→許可という運用だけでは足りず、もっと踏み込んで「仕事を止めて退出しなさい」とまで指導したが労働者が無視して働いた、という事実とその証拠がないと、労働時間になるというものです。
残業の申請許可制をとったとしても、労働者の勝手な残業に対して、会社は積極的に指導等をしていかないと、労働時間となってしまう可能性が高いのです。
4 会社側の反論と証拠
上記で述べたとおり、司法判断になった場合、労働時間かどうかは厳しくみられます。
そのため、日ごろからお客さまには、このようなことを前提に注意点を申し上げております。
上記のようなことは、弁護士や労働組合もよくわかっております。
やはり、備えあれば憂いなしがベストです。
ベストまでは難しくても、なるべく備えをして憂いをなるべく少なくする、ということは是非していただきたいと思っております。