労務問題を避けるにはどこまでやれば良い?

私が労務の助言等をさせていただく際、結構細かいことまで申し上げております。

また、慎重にご相談事案の予測をたて、お客さまが苦しい状況に追い込まれないよう細心の注意を払っています。

これは事案発生時のお話しですが、労務問題を回避するため、普段の労務管理にいったいどこまで手間をかければ良いのでしょうか?

大きく3つに分けながら、考えていきたいと思います。

1 裁判となった場合の備えを基本とするか?

1-1 理想は…。

日頃から裁判事案について弁護士の解説などを読んでいますが、書いてある通りにやれるのが理想的であることは、労務の専門家として当然同意できます。

ただ、使用者側勝訴で会社の参考となる労働事件の裁判例は、大手企業や中堅企業の割合がかなり多いように感じます。

もちろん中小企業でも勝訴の例もありますが、少ないように感じますし、敗訴の例は山ほど目にします。

1-2 マンパワーがいる

従業員数100人規模の企業で、裁判となった場合に備えた厳格な労務管理(上記勝訴の例など)をやろうとすると、私の感覚だとかなりのマンパワーが必要になってくると思っています。

どのくらいのマンパワーが必要かは、企業の実情等で一概には言えませんが、総務責任者の方が空いた時間で労務管理をやる場合では、何も問題がないときはいいのですが、社内で問題が発生した場合は、結構忙しくなります。

1-3 会社全体で取り組む必要

裁判を意識した労務管理を着実にやろうとしますと、会社の総務責任者の方だけでは難しいです。

従業員数100人規模なら、ほぼ無理だと思います。

そうしますと、せめて課長クラスの役職者には労務管理に積極的に参画してもらわなければなりません。

ちなみに、総務責任者の方が何とか一人でやれるのは、おそらく従業員数30人規模ぐらいまでだと思います。

1-4 理解させる努力

なぜこれほどまでの労務管理をするのか、課長クラスの役職者はもちろんのこと、場合によっては従業員一人一人にもよく理解させる必要があります。

どのように理解させるか、そしてどう実行性を確保するか、これも会社として重要な課題です。

1-5 やはり社長の意思が最も大事

会社全体で取り組み、全社的に必要性を理解しながら実行するには、生産性に直結する労務管理の必要性と重要性を社長ご自身に強く認識していただかなくてはなりません。

やはり、企業トップの経営判断が最も大事です。

2 世の中の多くの中小企業の現場はどうか?

上記1の労務管理ができている中小企業はそれほど多くはなく、なかなか実行するのは難しいというのが現状かと思います。

まず日々の業績アップや確保が企業としては最重要で、多忙すぎて労務管理にまで手が回らないことも大いにあると思いますし、法律等があまりに多すぎて、いろいろ調べたりしてもかえって嫌になってしまうことも多いと思います。

私は毎日、「労務問題を回避するための労務管理」を考えていますが、中小企業の現場はそうはいきません。

とはいえ、何かあったときに、知らなかったから許してもらえるということもありません。

3 私の考えはどうか?

3-1 可能な限りベターを目指す

一番ベターなのは、上記1に近づけることです。

それを実行するには、自社だけでは大変だと思います。

まずどのような裁判例などがあり、それに対処するにはどういう労務管理が良いか、そして自社の現場等を踏まえた場合にどこまでやれるのか、などの検討が不可欠になってきます。

そのため、私が現状等にあった助言をさせていただいております。

3-2 リスキーだが土俵際で踏ん張る

かなり危険ですが、日頃の備えはそれなりにして、何か発生したその都度、その事案を社外の人たちに関与されずにどう終わらせるか対応する、というのも一つの考え方ではあります。

ただ、かなりリスキーなのでおすすめはしていませんが、このような対応にならざるを得ないのも、現実問題として仕方がない部分もあるかとも感じています。

社外の人たちに関与されずに何とか終わらせるには、やはりその事案の法的見通し等を踏まえた対応が不可欠ですので、必ず私にご相談をいただきたいケースになります。

3-3 今後は、事なきを得る確率は減る

世の中の多くの中小企業で、私のような労務問題専門の社労士の助言なしに事なきを得ているのは、社長の人間力が凄い場合や、多少の行き違いぐらいはあっさり解決できるほどの労使間の信頼関係があるからだと思っています。

その他の要因もよく聞きますが、ここではコメントを差し控えます。

しかし、これは、相手(元従業員も含みます)がいて成り立つことです。

10年前と今とでは、だいぶ相手の質が変化しています。

今後、10年ではもっと変化するでしょう。

そうしますと、これまで事なきを得ていた事案は、確実に減っていくと私は考えています。

3-4 企業の変化が必要

例えば、ハラスメントなどは、10年前から今と同じぐらい事案としてはあったのだと思いますが、表にでること(従業員側がハラスメント被害の主張を第三者にすること)は今よりは多くなかったと思います。

ハラスメントと感じる人が今より少なかったのだと思いますし、感じたとしても行動に移すまでには至らない方が多かったのだと思います。

昔は良くて今がやりづらいという意味でとらえると時代に取り残されますので、企業側も(当然私も)変化していかなければならないと強く感じています。