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労働条件の不利益変更
労働条件の不利益変更で、一番わかりやすいのが賃下げです。
変更前後の支給額が同一でも、不利益変更となる場合が多くあります。
詳細は賃金の不利益変更で述べていますが、合法的に労働条件の不利益変更をするには労働者の合意が原則です。
不利益変更に対する労働者の合意がなければ、当該不利益変更は原則無効となります。
自社でいろいろ調べながら苦労して作成した新就業規則があるとします。
新しい就業規則には、ほとんどの場合、何かしら労働者に不利益になる事項があります。
自社に不利になる新しい就業規則は、普通つくりませんので。
ここからが問題です。
折角新就業規則を作成されても、労働者の合意がなければ、絵に描いた餅になります。
合意は労働者の代表ではなく、個別の合意です。
また、合意を客観的に裏付けるために、合意書を個別に取り付けます。
これでやっと、新就業規則が民事的に有効になります。
労基署への届け出は、その後の話になります。
上記の流れが非常に大事なのですが、合意書を取り付けているケースは少ないように思われます。
新就業規則を労基署へ届け出る際、労働者の過半数を代表する者(ある一定の労働組合がない場合)から意見を聴く必要がありますから、意見書を作成します。
この意見書がないと労基署は受理しませんから、就業規則の変更関係の書類にはほぼ一緒に保管されています。
しかし、労働者の個別の合意書は、正直申し上げますと、一度も拝見したことがありません。
「そんなこと言うが、労基署からは何も指導されることなく、今に至るぞ」と思われた方も多いと思います。
そうです。
合意書がないから労基署から指導されたと、私も一度も聞いたことがありません。
なぜならば、合意書を取り付けるのは、労基法とは関係がないからです。
労基法的(労基署的)には、上述の意見書があれば足りるのです。
しかし、労働契約法という法律では、合意書を取り付けておかないと、民事的効力が無い(可能性が高い)とされてしまうのです。
結果、労働者(ほとんど弁護士・労働組合が関与)から無効と主張されて、労働者の主張通りになってしまう(可能性が高い)という事になります。
労働条件の不利益変更は、主に就業規則の変更時にみられます。
最も大事なのは、合意書の取り付けです。
労基署への届け出は、労基法違反とならないように、合意書の取り付け後にきちんとすればよいだけです。