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高額年俸の医師でも残業代は厳格判断
2017年7月執筆
1 年俸1700万円でも、残業代は含まれていない?
この事案は、以前から私の業界の中では話題になっていました。
最高裁は、雇用契約で残業代を当該年俸に含む合意があったと認めていますが、どの部分が残業代に当たるか明らかでなく、残業代が支払われたとはいえない、という趣旨の判断をしました。
簡単に申しますと、残業代が年俸1700万円に含まれているという主張は分かったが、区別や内訳等がはっきりしていないから、残業代を支払ったとは認めないということです。
この判断のもとになっているであろう有名な判例で、高知県観光事件というタクシー会社の残業代裁判があります。
高知県観光事件では、残業代とそうでない部分をはっきり判別できるようになっていないから、残業代を支払っているとは認められないといっています。
この判例は労務問題を扱う私としては、基礎の基礎として認識しています。
社労士になる前の、労務コンサル時代から知っていました。
2 高額年俸だから油断した?
病院側の賃金規程等(雇用契約の内容)をどのような方が助言・作成をしたかわかりませんが、高額年俸だから残業代が年俸に含まれているとの主張で通ると油断していたのかもしれません。
高額年俸だから労基法の解釈等を緩やかに見てくれると思っていたかもしれませんが、今回最高裁は厳格に見たようです。
ただし、病院側代理人が述べていた、労働法規の厳格適用が現実に合致していない側面がある旨の主張は、私も非常に共感します。
しかしながら、最高裁の判断は、大変厳しいものでした。
年々厳しくなってきている感があります。
この点については、労働法規の改正を待つほかないと、個人的には強く感じます。
3 定額残業手当(みなし・固定残業代等の名称問わず)の有効性を高めるには?
以前から、定額残業手当への逆風を折にふれ述べてきました。
今も裁判所の見方は変わっていません。
裁判所の見方が変わっていないということは、当然、残業代請求する側の見方も変わっていないということです。
ただ、ほんの少しの裁判例ですが、賃金規程等(雇用契約の内容)に若干のラフさがあっても、労働時間管理と残業代検証等を適切にしている企業には、裁判所が定額残業手当を認めるケースも出てはいます。
定額残業手当の有効性を高めるポイントとして、
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過去の判例に基づき、賃金規程等(雇用契約の内容)で適切に定額残業手当を規定していること
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規定に基づいて適切に運用できていること
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労働時間管理が適切にできていること
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残業代検証等が適切にできていることなど
があげられます。
定額残業手当の有効性を高めるのに、これらは最低限の条件になってきます。
この最低限の条件を、上記病院の例は、クリアーしていなかったようです。