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問題従業員の対応(入口・初期対応と管理・出口対応)
法改正や時代の変化に関係なく、経営者の方が一番悩まれる「問題従業員の対応」について、述べたいと思います。
人の問題ですので、このお悩みがなくなることはありません。
ここでのテーマは、主に「入口・初期対応」と「管理・出口対応」について述べます。
当たり前だと思われることもあるかと思いますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
1 そもそも問題従業員を採用しない
「そんなのわかりきっている」とのお気持ちは当然ですが、これが一番です。
採用段階においての見極めが、最も大事です。
「こんな人とは思わなかった」と後悔する採用失敗例は、採用担当を変えることで失敗が少なくなることがあります。
わかりやすい例で申し上げますと、少人数の企業で、社長が常に採用面接をしている場合、同じような人を採用してしまい、結果、同じような労務問題が起きやすい、という一つの傾向があります。
社長が面接で気に入っても、採用後に合わなくなる、というのはよくあるパターンです。
そんな時は思い切って、社長のことをよくご存じの身内や信頼できる管理職の方に採用を任せて、社長は一切ノータッチというやり方をすると、意外とうまくいくケースがあります。
ともあれ、問題従業員を採用しがちな担当者は、変えた方が良いです。
人手不足の時代ですので、応募者を選んでいられない事情があることは、よく存じ上げております。
しかし、一度採用してしまうと、労働契約を解消するのは、非常に大変です。
履歴書等で怪しいと感じる、話をしていて気になる、嫌な予感がする、という場合、かなりの確率で当たっていると思われますので、採用しない方が無難です。
直感は大事だと思っています。
人が不足していて苦しいのですが、採用後の苦しみよりはマシだと切り替えていただく方が良いかと思います。
それでもどうしようもない時は、労務リスクを認識したうえで採用するしかありませんが、下記で述べる「管理・出口対応」は、大変ですが、がっちりやっていただく必要があると思います。
2 採用面接で見極められなかったらどうすれば良いのか?
結論としましては、早めに手を打つ、ということです。
(1)内定取り消し
(2)試用期間で本採用しない
(3)入社1~2年後の解雇など
という流れがありますが、内定から時間がたてばたつほど、トラブルになる可能性が高くなっていきます
ですので、「まぁ、とりあえず採用したことだし、しばらく様子を見て、1~2年してダメだったら解雇すればいいか」というお考えは、お持ちにならない方が良いと思います。
会社から労働契約の解消を働きかける場合、相手からすると、内定から時間がたてばたつほど、会社に対する悪感情が増していきますし、解雇されたら、それこそ決定的な悪感情を抱く可能性が高いです。
内定取り消しや試用期間の段階なら、双方話し合いの結果、相手も仕方ないかと思うことも多く、トラブルになる可能性は低いです。
法的にはいろんな問題があるのですが、それが表面化しない(するまでの悪感情までは持たない)ということかと思います。
3 何年かして問題行動が起き始めたらどうすれば良いのか?
いろんなことを考えますが、まずは、雇用を前提とした注意指導から始めます。
事案によっては、一発で解雇を選択せざるを得ないこともありますが、実務上はめったに起きません。
ほとんどの問題行動において、一発解雇は無理(無効になる)で、やはり改善のための注意指導がまずないと、会社としては苦しいです。
また、その注意指導をした証拠も残すべきです。
証拠づくりのための注意指導ではなく、雇用を前提とした注意指導の証拠、というのが大事だと思います。
裁判実務では、前者を裁判所は見抜くようです。
もちろん、懲戒事由に該当するような行為であれば、適切に懲戒処分をすべきですが、解雇は通常難しいです。
4 どのように注意指導をし、記録化すれば良いのか?
管理職の方に注意指導ノートを作成してもらい、注意指導の内容等を記録化してもらうことが多いですが、問題従業員や問題行動が多かったりすると、管理職の方の負担が大きくなって、記録化どころの話ではなくなり、管理職の方が精神的に参ってしまうことがあります。
そんな時などに活用するのは、「業務を見える化」する日報が良いと思っています。
問題従業員に簡単な日報を毎日書いてもらい、業務内容をどこまでできたのか等、数値化してもらって報告させます。
それに対して、上長が感情を挟まずに淡々とコメントを書き、定期的に面談を行い、業務の改善方法等について具体的に教育指導を行い、その内容も面談記録として残しておきます。
このような積み重ねがあって、業務が改善され問題従業員から普通の従業員になれば良いですし、問題従業員が改善する気もないということであれば、その次を検討していくことになっていきます。
本当に問題のある従業員は、このような日報を途中でサボるようになります。
5 最終的に解雇を選択したくなっても
問題従業員に改善の見込みがなく、もう会社に在籍させるわけにもいかなくなってきた場合、どうしようもなければ解雇やむなしのケースもあると思いますが、やはり合意退職がベターだと思います。
私が弱気になって申し上げているのではなく、会社の方からわざわざ紛争リスクになるかもしれない判断をする必要があるのかどうか、ということが大事だと思っているからです。
労働契約は、合意で始まります。
ですので、終わりも、解雇よりは合意が望ましいです。
※使用者からすれば、自主退職がベストです。
解雇とは、使用者の一方的意思表示によって、将来的に労働契約を終了させるものです。
※しかし、使用者は、解雇が有効であるとの非常に高いハードルを越えなければなりません。
※そのため、日本では解雇が難しいのです。
辞職とは、労働者からの一方的意思表示により労働契約を終了させることをいいます。
※労働者は、2週間経過すれば、退職できます。
※使用者の解雇のハードルとは、全く異なります。
労務問題は、感情的側面と法的側面が混在して発生することが多いです。
期待して気持ちよく採用したまではいいけれど、採用後、お互いに雇用関係を維持するのが難しくなったのであれば、なるべく気持ちよく終わりたいものです。