未払い残業代請求の時効3年!社内の総点検を

1 未払い残業代請求が2年分から3年分に

※2020年2月時点

報道されているとおり、賃金債権の消滅時効期間が2年から3年に延長される予定です。

予定通りでいけば、2020年の4月1日からの施行(2020年4月以降に発生した賃金債権について適用)となります。

当面は3年とし、将来的には5年になるという内容です。

重要なのは、未払い残業代請求が、2年分から3年分になるということです。

単純計算で、1.5倍です。

2 点検する主なポイント

(1)固定残業代が有効かどうか

よくあるパターンが、昔から●●手当を残業代相当分としていて、そのままになっているというケースです。

現時点での固定残業代の有効性のハードルは、例えば平成20年ごろと比べますと、全く異なっています。

平成20年当時のものは、現時点では、ほぼ残業代相当分として認められないとご認識いただいた方が良いと思います。

(私がご提案する最新のものでないと、現時点において、固定残業代の有効性を高めるのは困難です。)

 

(2)労働時間管理が適切にできているか

ざっくりした労働時間管理では、未払い残業代請求をされたときに、反論が困難になってきます。

請求する側は、残業代請求アプリやメール・ライン・手帳等々で記録を残していることがほとんどです(記録を残しているからこそ請求に至る)。

よくあるパターンの始業前や終業後の勝手な残業を、放置していてはいけません。

会社として積極的に注意指導等して、それらをなくしていかなくてはなりません。

また、休憩時間の長い会社さまも要チェックです。

本当に休憩できているのかどうかについて、就業規則の休憩時間の記載だけで押し切るのはリスキーな時代になっています。

(労働時間管理は、厚生労働省がかなり力を入れてきている。)

ともあれ、適切な労働時間管理ができていないと、上記で述べたことについて検証もできません。

 

(3)残業代を実労働時間通りに支払っているか

細かいですが、実労働時間は1分単位です。

例えば、給与計算ソフトの設定の関係で毎日●分の端数切り捨てとか、よくあるケースなのですが、塵も積もれば山となるで、3年間の切り捨て分を総計するとそれなりの時間数になってきます。

 

(4)本当に管理監督者か?

企業の規模を問わず、会社が管理監督者だと認識している従業員に対しては役職手当を支払い、残業代は払っていないというケースが非常に多いです。

ここでは詳細は割愛しますが、中小企業において、労基法上の管理監督者といわれる人はほぼいないというのが、私の感覚です。

法的に管理監督者と認定されるハードルは、非常に高いのです。

大企業でも同様です。

有名なのは日本マクドナルド事件で、店長が未払い残業代請求をして、会社が負けました。

 

管理監督者の未払い残業代請求で嫌なのは、金額が多額になるということです。

1円も残業代を払っていませんし、残業代の基礎となる賃金は役職手当を含めますので、かなり高額になります。

1時間当たりの残業代の単価が高く、そして3年分です。

加えて、働き方改革で管理職にしわ寄せがきて、部下の仕事が終わらないため残業をしている管理職は、相当数いるような気がします。

※補足ですが、仮に労基法上の管理監督者であったとしても、深夜割増賃金の支払いは必要です。

 

請求するタイミングとしては、管理職ですから、退職後が多いと思います。

在籍中はさすがに請求する行動は起こさなくても、退職してしまえば、元管理職といえども躊躇なく請求してくるケースがあります。

もめたうえでの退職で会社に対して何らかの感情を持っていたり、退職確定後に「着手金無料で簡単に残業代請求ができる」という成功報酬型の弁護士広告をみたなどの動機がみられます。

●百万円はいくでしょうから、弁護士に成功報酬を払っても、かなりの金額を手にすることができます。

3 時効3年を誰が注目しているか?

請求する人はもちろんですが、未払い残業代請求事案を取り扱っている弁護士も注目しているはずです。

また、今後、未払い残業代請求事案を積極的に取り扱う弁護士が多くなるはずです。

時効2年の今でも増えているようですので、時効3年になれば確実に増えるはずです。

4 対策はお早めに

時効の延長で、未払い残業代の金額が増加するのは確実ですので、自社でできることから着実に手を打っていただきたいと強く願っております。

未払い残業代請求をされたことがない会社さまにとっては、私が申し上げていることが大げさに思えるかもしれませんが、裁判沙汰になった場合、本当に時間・労力・お金がかかります。

終わったら、疲れと嫌な気持ちだけが残る、という感じです。