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60歳定年後の再雇用者の労務リスクと対応策
2018年10月5日の日経新聞朝刊1面に、「65歳以上雇用へ法改正」という見出しの記事が出ていました。
この記事を読む前は、副業を認めた場合のリスクなどをメルマガの題材として考えていたのですが、下記に変更します。
今後の定年後の労務管理の在り方を考えたときに、以下に述べる点がかなり気になっておりまして、今回は60歳定年後の再雇用者の労務リスクと対応策について述べたいと思います。
何回かご紹介しております長澤運輸事件と重複する部分もありますが、私が繰り返しメルマガで取り上げておりますのは、それだけ企業の労務リスクが高いためです。
また、会社さまによって、このリスクへの対応に温度差があるように感じておりまして、改めて注意喚起の意味でも取り上げたいと思います。
1 労務リスクがある会社は世の中に多数
長澤運輸事件の最高裁判決が出た現在、下記(1)から(5)に該当する会社さま(世の中の多数かと)は今後の対応策を早急に検討する必要があります。
(1)60歳定年で65歳まで再雇用
再雇用では有期労働契約になるため、労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)を争点とした長澤運輸事件が起きました。
(2)正社員定年前と定年退職後の再雇用での職務内容等は同じ
(3)しかし、賃金については大幅減
なぜ大幅減になっているかですが、高年齢雇用継続給付が関係しているケースが多いからだと思います。
社労士やいろんな人事労務関連業者がシミュレーションをして、定年後の賃金をどれぐらい減額すれば当該給付を有利に受給できるかというのが流行っていました。
私自身は労務問題への対応・対策業務がメインですので、取り扱ったことはないのですが…。
ちなみにですが、長澤運輸のように定年前の79%支給ならどの企業でもセーフというわけではありません。
長澤運輸という個別企業の各種事情を踏まえての判決ですので、今後ひとり歩きするかもしれない79%セーフ論は、そのまま信じてしまうと危険です。
一つの参考事例程度にお考えいただいた方が良いです。
※最高裁判所は長澤運輸事件で労働契約法20条の「その他の事情」というものを考慮したのですが、それゆえに、どこからセーフでどこからアウトなのかがわかりづらいのです。
(4)大幅減の理由について合理的説明は困難
上記(3)を経て、ざっくり決めてきたというケースが多いように思いますので、説明は極めて困難かと思います。
しかし、これまでのことはやむを得ないとも思います。
世の中がこのようになるとは、予測困難だったでしょうから。
(5)正社員には支給し定年後再雇用者には不支給の手当について、その理由の合理的説明は困難
現時点で、合理的説明ができているケースは少数かと思います。
2 なぜ労務リスクがあると言い切れるのか?
最高裁判決が出ると、それを基に、自社の労務管理の法的問題点の有無が明らかになってしまいます。
上記1の(2)以降に該当するケースで労務問題が発生しますと、会社有利に判断される要素はありません。
そのため、労務リスクがあると言い切れるのです。
その労務リスクは現時点でもありますし、何も手を打たないと、将来的にはもっと大きくなると思います。
なぜなら、10月5日付の新聞報道のように、政府が雇用確保の延長を検討しているからです。
3 現時点での主な対応策をご紹介すると
私だけの見解ではなく、労務問題を扱っている専門家も論じている主な対応策になります。
(1)職務内容や配置の変更範囲等を正社員と明確に区別する
まずはこれができれば良いのですが、職務内容が会社さまで何種類もない、従業員数が多くはない、営業所がないなど、区別できない事情も多々あり、難しい場合が多いことは私もよく認識しております。
(2)減額理由の説明をする
長澤運輸は運送事業が赤字のため人件費を削減する必要があり、その点を労働組合に説明していました。
(3)所定労働日を減らす
シンプルで減額理由の説明がしやすいのですが、人手不足で所定労働日を減らせないという事情もあります。
余剰人員が多かったリーマンショック後とは、逆の状況かと思います。
また、所定労働日数を減らすということは、現行のパートタイム労働法(改正後はいわゆるパート有期法)が適用されますので、労働契約法とパートタイム労働法の両方をクリアーしないといけません。
※パートタイム労働法も、結構厳しい法律です。
(4)代替賃金を設ける
これも長澤運輸が行っていた方法です。
歩合給や成果給の比率を高くすることが考えられますが、そもそも歩合給等の考えにあわない職務内容でしたら、難しいかもしれません。
4 上記対応策が難しい場合は一体どうすれば良いのか?
一番大事な点です。
これは各会社の事情や現状をよくよく精査しないと、一概には言えません。
しかし、一つの方向性として、これがベターな選択肢ではないかと思っている方法があります。
ただ、この選択肢をご提示するにも、会社内における事情・現状の精査をしないと軽はずみには言えませんので、ご興味のある方は下記の初回無料相談をクリックして、お問い合わせください。
いずれにしましても、60歳以降の方の労務管理を今後どうしていくのか、これは会社にとって避けては通れない経営課題になっております。
後手後手にならないよう、いつでもご相談ください。