top of page

従業員の健康問題

2018年最後のメルマガは、この1年で一番ご相談の多かった「従業員の健康問題」に関して述べたいと思います。


(ちなみに、二番目に多かったご相談は、労基署からの是正勧告等でした。)


1 健康問題は労働行政が特に注視している


電通事件以降、労働行政は特に長時間労働に対して力を入れていますが、その理由は、長時間労働は従業員の健康を害しやすいからです。


昔からなのですが、労働行政は、業務が原因で従業員が健康を害することを防ぐため、いろんな法律を整備してきました。


例えば労働基準法では、法定時間外労働や法定休日労働は36協定を届け出しないと違法になりますし、割増賃金の支払い義務を課して、残業時間数を抑制しようとしています。


皆様ご存知の通り、改正労基法では、時間外労働の上限規制が法制化されました。


また、労働安全衛生法に健康診断や医師の面接指導等のさまざまな規定があるのは、まさに健康障害防止です。


2 業務上の健康問題


業務上の健康問題(当然けがも含みます)となれば、基本的には労災認定されますし、会社が安全配慮義務を問われた場合、事案により多額の金銭支払いを余儀なくされます。


業務上の健康問題であれば、労災申請を会社が積極的に行った方が良いですが、業務上なのかそうでないのか、微妙なケースも結構あります。


(※労働者死傷病報告は、労災申請がなくても必要な場合がありますので要注意です。ややこしいですが。)


このような場合は私にご相談ください。


微妙なケースで特に何もしなかった場合、後日「あれは業務上のもので労災事案だ!」と主張されることがあり、会社としては労災隠しをしたとみられるかもしれません。


また、業務上かどうか微妙なケースにもかかわらず、労災請求書類の事業主証明を安易にしてしまう場合がありますが、これも危険です。


安易に事業主証明をしたばかりに労災認定され、その結果、会社の安全配慮義務を問われ多額の金銭を支払う、このようなケースはあります。


【労災認定→安全配慮義務を問う→会社負け→金銭支払い】


※労災認定があったうえで訴えられると、この流れを止めることは極めて困難です。


3 業務外の健康問題


業務外のケースで問題となってくる代表的なものは、休職の扱いをどうするか、ということです。


一定期間にわたり労務提供ができない場合、会社は就業規則に基づいて、休職を検討することになります。


いきなり解雇とはせず、まずは解雇を猶予する意味で休職は検討すべきです。


いきなり解雇して会社が訴えられた場合、基本的に会社は負けます。


休職においてまず大事なのは、休職の判断および命令は、会社がするということです。


本人の請求で休職できるというものではありません。


就業規則では、どのような条件に該当すれば休職を命じるのかを適切に規定しておくべきです。


いろんな条件を会社が設定した場合、休職命令を柔軟に出せないことになりかねませんので要注意です。


また、いつから休職が始まったのか、あいまいなケースがあります。


休職期間開始日があいまいですと満了日もあいまいになりますので、期間満了による自然退職(実質的に解雇と同様)がいつなのか、はっきりさせられません。


従いまして、このようなケースを防ぐため、開始日と満了日を明確にした休職命令書は必須となってきます。


この休職命令書があれば、休職期間満了による自然退職が100%大丈夫かといいますと、そうではありません。


休職命令書の発行以外にもいろいろとやるべきことはありますし、特にメンタルヘルス不調の方の場合には、休職期間の延長を検討したりします。


機械的に休職期間満了で自然退職ではなく、会社としては、できる限りの配慮をされた方が良いです。


そうでないと、自然退職(ほぼ解雇と同じ)の有効性を厳しく問われ、出るとこに出られると会社は苦しくなります。


最終的に休職期間が満了する際、話し合いでの合意退職の努力をされるのがベターです。


これができない場合は、自然退職(ほぼ解雇と同じ)の決断をすることになります。


(ちなみに、ご本人から退職届が出された場合、適切な手続きをすれば、ほぼノーリスクです。「適切な」というのが大事です。)


4 最後に


従業員の健康問題が起こらなければ良いのですが、従業員数が多くなればなるほど、発生頻度は高くなります。


残念ながら発生してしまった場合、間違った方向にいかないよう私にご相談ください。

bottom of page