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定年後再雇用の賃金引き下げ

注目されていた定年後再雇用の賃金引き下げの高裁判決が出ました。

2016年11月3日付の新聞報道で大きく報じられました。

結論としては、会社側の事情に配慮した形でした。

 

私は、この高裁判決は妥当だと思っています。


そもそも、一審判決は、様々な専門家からも批判されていました。

定年後再雇用者という前提への理解がおかしい、などです。


一審判決の特徴などをまとめますと、


原告らの業務内容が運送業務であったこと

その業務は、定年前も定年後もまったく変わらなかったこと

この事件の会社の事業所は、ホームページに載っている本社を除いて、 事業所が全国に一つしかないこと

従って、運送業務に従事する原告らには、事業所間の異動ということ自体が 発生し得ないこと

これらの前提条件などをもとに、有期労働契約と無期労働契約を比較検討したとき、有期労働契約であることをもって無期労働契約との賃金格差があることは、労働契約法20条により無効


このようになっていました。


今回の高裁判決は、新聞報道を読む限り、一審判決への様々な批判にこたえるような内容になっているのだと思います。


私が一審判決でおかしいと思っていた点は、


終身雇用が強く残っている日本において、60歳定年まで雇用保障をし

なおかつ、本人が希望すれば65歳まで再雇用を義務付けられ

次世代を担う若い人材を採用・雇用しなければならないのに(会社の総人件費は、この時点で少なくとも上がることは目に見えています)

定年後再雇用者の賃金を下げることは違法、とはどういうことか?

総人件費の増加をどうするのか?

売り上げが増加しない場合、会社の将来はどうすればいいのか?

 


などです。


ともあれ、妥当な高裁判決が出て良かったと思っています。


ただ、今後も、定年後再雇用者に限らず、労働契約法20条の問題は裁判沙汰が続くと思います。

よって、有期労働契約と無期労働契約との間で、以下の点について、できるだけ明確な差異を設けてください。


業務の内容

責任の程度

業務の内容及び配置の変更の範囲


運送会社さんの定年後再雇用者も、可能な限り差異を設けていただいた方が良いです。


最高裁でどうなるかもわかりませんし、リスクはできる限りなくしていくのがベストです。



具体的にどのように差異を設ければよいか、いつでもご相談ください。


 


【参考:労働契約法第二十条】


有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。 

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