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従業員の辞職の問題

1 辞職とは

労働者からの一方的な意思表示により労働契約を終了させることを、辞職といいます。

辞職の意思表示をしてから2週間が経過すれば、会社を退職できます。

例えば、2月1日に辞職の意思表示がなされた場合、初日の2月1日は算入せず、2月2日からカウントし、14日目の2月15日(この日は所定労働日という前提)までは労働義務があり、この日が経過することで退職となります。

2 解雇は不自由で辞職は自由

使用者からの一方的な意思表示により労働契約を終了させる解雇は、「実質不自由」です。

反対に辞職は、労働者が自由に会社を退職でき、法的にも担保されています。

就業規則には、「退職日の30日前には会社に申し出ること」という趣旨の規定が多く存在します。

この退職申出30日前ルールは、法律に根拠があるわけではなく、常識として「引き継ぎ等もあるから、少なくとも30日前には言ってきてね」と就業規則に定めているだけで、法的に担保されているわけではありません。(この場合において、会社が承諾すれば、労使間での合意退職ということになります。)

そのため、労働者が絶対辞職したいと言ってきた場合、退職日についての話し合いを任意でできたとしても、30日後にしか退職を認めないという強い対抗策を、実は打てないのです。

それにもかかわらず、近年「退職代行」といわれるサービスが多く見られますが、私はちょっと不思議な現象だなと思っています。

3 有休消化の問題

※ここでは「合意退職の前提となる退職申出」なのか「辞職」なのかという点があるのですが、その点を述べますと複雑になりますので、単純に「退職」という言葉で述べます。

退職の際にご相談いただくこととして、退職の意思表示の翌日から未消化分の有休を全部消化し、そのうえでの退職日を決めてきているため、(1)有休を認めないということができないか、(2)何とか引き継ぎなどの業務をさせられないか、という2点があります。

(1)ですが、使用者には時季変更権(有休取得する日にちを変更する権利)の行使は認められておりますが、拒否することはできません。

また、未消化分の有休をきっちり計算したうえで退職日を決めてきていますので、退職日より後の日に有休取得をずらすこと(使用者の時季変更権行使)も不可能です。

(2)ですが、どうしても引き継ぎ業務をさせないと会社業務に支障をきたすのなら、違法でない例外的な有休買取か、休日労働を命令するしかないと思います。

もっとも、休日労働の命令に、素直に応じるケースは少ないはずです。

会社としては、法的に打つ手は限られており、かつ本人の理解がないと、なかなか難しいというのが現実なのです。(理解があれば、こんなお話しにはならないですが…。)

 

4 終わりに

結局のところ、法律論で考えると、労働者が辞職(または退職)したい場面では、会社としては打つ手が限られてきます。

法律論ではなく、人としての常識論で話し合いをするという、「べたな方法」ぐらいしか現実的手段としては思いつきません。(会社の対抗策として特殊な裁判例がありますが、参考にするのはリスキーです。)

会社にとって有益な人材が突然辞職(または退職)を申し出るというのは、何かそこに至るまでの理由があるはずです。

そうならないように、普段からの労務管理に気を配っていただくというのが大事だと思います。

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