労働者派遣法の「労働契約申込みみなし制度」

労働契約申込みみなし制度とは、違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合、派遣先事業主は、派遣労働者に対して、労働契約の申込みをしたものとみなす制度です。

 

制度の対象となる違法派遣にはいろんな形態のものがありますが、特に「いわゆる偽装請負の場合」に注意が必要だと思っています。

 

偽装請負を簡単に表現しますと、「X社と請負契約を締結しているY社の労働者を、X社においてX社の指揮命令で労働させること等」になります。

この場合、X社とY社とは「派遣契約」を締結しなければなりませんが、ついうっかっりと偽装請負になっているケースがあります。

 

このケースの場合、違法派遣になりますので、労働者派遣法に基づく「労働契約申込みみなし制度」が適用され、当該労働者が承諾した場合、X社と当該労働者との間で労働契約が成立します。

 

ただし、「違法行為について善意無過失である旨のX社の抗弁が認められた場合、労働契約の申込みみなし制度は適用されない」という規定があります。

 

では、いったい誰がX社の善意無過失の有無と制度適用の可否を判断するのでしょうか?

 

一見すると、こういうたぐいの話は労働行政当局のように思えるのですが、実はそう単純ではありません。

行政が関与した場合、行政の立場としての判断(それに基づく行政指導等)はしますが、あくまでそこまでです。

最終的には民事不介入(当事者間の契約行為に立ち入らない)ですので、X社に当該労働者を雇えなどの命令や、X社は雇わなくていいなどの判断を行政はできません。

民事的なトラブルになった場合、判断するのは行政ではなく、やはり裁判所なのです。

 

ただ、労働者派遣法のこの論点で日常的に裁判になるかというと、平成29年春時点で、私の知る限りまだ見受けられません。

今のところ、行政の関与をきっかけに当事者同士はまるくおさまり(民事的なトラブル回避)、行政からは違法状態やその認識の程度に応じた動き(おとがめなし・行政指導・企業名公表等)があるのだろうと思っています。