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懲戒処分を検討する前に必ずご確認ください!

懲戒処分に関する労務問題を回避する手間を、企業はどこまでかけるべきなのでしょうか?

労務問題専門の冨島社労士が解説いたします。

1 懲戒処分するための根拠

大原則ですが、懲戒処分を適法に行うには、適切な懲戒規定のある就業規則が必要です。

就業規則がない場合、または不適切な(合理性がない)懲戒規定であった場合、法的な争いになったとき、完敗してしまう、または非常に苦しくなります。

懲戒規定は非常に厳格に見られますので、軽い気持ちで作成するものではありません。

その他、適法な懲戒処分の法的論点はたくさんありますが、ここでは割愛します。

端的に申し上げますと、刑事事件と似たようなプロセスを経て、企業内での懲戒処分が適法であったかどうかを判断します。

適法でなければ当然に、当該懲戒処分は無効となります。

この有効か無効かの争いで、結構裁判沙汰になっています。

参考:懲戒に関する法律の規定

労働契約法

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

2 懲戒処分を検討する前にやるべきこと

従業員の問題行為の事実関係、本人の過去の同様の行為、他の従業員の同様の行為、会社としての注意指導の有無などなど、懲戒処分を検討する前に整理すべき情報はたくさんあります。

整理すべき情報がそもそも記録として残っていない(記憶にしかない)という場合が非常に多いですが、懲戒処分の有効性についての争いになったとき、会社にとってこれらは有利には絶対なりません。

懲戒処分を検討する前に、問題行為の事実関係(なるべく具体的に)、本人がそれを認めているか否認しているか、反省の有無、会社の注意指導はどうであったか、同様の行為は何回目なのか、他の従業員への会社の対応はどうだったのか、などを普段から意識して労務管理をしなければなりません。

ただし、自社のマンパワーに応じて、どこまで実行するかが問題となってきます。

なぜなら、上記の事柄を書面等で適切に記録(証拠化)する必要があるからです。

教科書通りやれるに越したことはないのですが、本業でご多忙の中、労務リスク回避のためにどこまでやった方が良いか等、自社でのより良い具体策をご検討の際は必ずご相談ください。

3 問題行為が起きたらすぐに始末書は出させるべきか?

これも非常に多いケースですが、何か問題行為があった場合、とりあえず始末書を出させているというお話しを、本当によくお聞きします。

そのお話しをお聞きしたらすぐにお伝えしていますが、「とりあえず始末書」はやめておかれた方が良いです。

始末書とは本来、処分として始末書の提出を求めるもので、報告書的な意味合いで提出させるものではありません。

では、問題行為が発生した時に取り付けるべき書面は何が良いかといいますと、顛末書がベターだと考えています。

書類の仕分けは上記の通りですが、大事なのは、顛末書にどのような記載があり、それを会社としてどう吟味し、対応・処分をどうするか、そして、処分決定なら始末書を提出させるわけですが、その始末書にはどのような記載があるか、始末書自体を提出しない場合はどうするか、などなど、労務管理の現場の実務では、いろんなことを考えなえればなりませんし、出てきた書類をどう会社として活用していくかが重要となってきます。

この実務的な観点は、多岐にわたりますのでここでは割愛しますが、このように細かくて煩わし点があるからこそ、弊事務所に必ずご相談ください。

4 おわりに

問題行動発生、それに対する会社の対応、懲戒処分検討・決定、始末書等の扱いなどの一連の流れの中で、会社がやるべきことが欠落していると、争いになった場合、その点を突かれてしまいます。

ですから、どこまでやるか(やれるか)は会社さまにとっては悩ましい部分ですが、少なくとも、最低限を押さえていないために会社側主張が通らない、という事態は避けなければなりません。

そのような争いが表面化(第三者が関与等)する前の段階で、事態が収まるような労務管理をすべきことは言うまでもありません。

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