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長時間労働・過重労働の自主点検
平成29年4月現在、所轄の労働基準監督署の上部組織である労働局が、「長時間労働の抑制・過重労働による健康障害防止のための自主点検」を、各企業の事業場に対し、任意の自主点検を依頼しています。
1ヶ月当たり80時間を超える時間外労働を可能にする36協定を締結している事業場を対象に、自主点検の実施をお願いしているようです。
任意ですから法的に報告義務はありませんが、自主点検の結果報告を提出しない会社は少ないようです。
どのような内容の自主点検を求められるのか、各項目の概要をご紹介し、どのような対応が望ましいかなど、私の見解を述べます。
1 時間外・休日労働時間の実績
直近の1年間において(*所定労働時間を含まない)
1ヶ月の時間外労働時間と休日労働時間の合計が最も多い労働者は何時間で、それは何月のことか?
事業場全体で残業が多かった月で、1ヶ月80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者の人数と職種・業務は?
年間で時間外・休日労働が一番多かった労働者は、年間合計何時間で、その職種と業務は?
2 特別条項付きの36協定
特別条項付きの36協定とは、月45時間を(告示の限度時間)を超えて時間外労働をさせることがあるなら、どのような時に、どのようなルールで、何時間させることがあるのか等を定めた条項のある36協定のことを言います。
そもそも時間外労働をさせるにあたり、所轄の労働基準監督署へ36協定を届け出ているか?
月45時間(告示の限度時間)を超えて時間外労働をした業務の内容とその理由は何か?
特別条項により月45時間を超えた時間外労働を行った回数(月数)は?
特別条項を発動させる際、36協定で定めた労使間の手続きは行ったか?
特別条項での割増賃金率の定めをしているか?
36協定の周知は適正に行っているか?
3 健康診断・衛生委員会等
労働安全衛生法等に基づき、健康診断の実施、衛生委員の開催、長時間労働による健康障害防止などの衛生に関する事項について関係労働者から意見聴取は行っているか?
4 医師による面接指導・ストレスチェック
時間外・休日労働が1ヶ月に100時間を超えた労働者が申し出た場合、医師による面接指導を実施等しているか?
上記の実施人数は、直近1年間で何人いたか?
上記以外で、会社の任意の制度(例えば、時間外・休日労働が80時間を超えた労働者が申し出た場合に医師の面接指導実施)があれば、具体的にはどのようなものか?
ストレスチェックの実施状況
5 私の見解
5-1 平成28年から本腰を入れている
電通事件等が起きる前の平成28年春頃から、厚生労働省が36協定の特別条項で80時間超の会社の監督等を強化すると言われていました。
平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」や「日本再興戦略2016」でも、「長時間労働対策」が喫緊の課題とされていました。
5-2 電通事件と働き方改革
電通事件と政府の働き方改革の議論により、長時間労働対策が社会的に大きくクローズアップされ、社会全体が長時間労働を見直さねばならないという状況になってきています。
この流れは変わらないと思いますし、今後ますます広がっていき、中小企業へも待ったなしとなってくるのは火を見るより明らかです。
5-3 労働局が求める自主点検への対応
自主点検を求められたら、応じた方が良いですし、結果報告は正直に現状を書いた方が良いです。
理由としては、点検結果提出の協力をしなければ、定期監督に入られる可能性が非常に高くなると容易に想像できるからです
また、この自主点検に法的拘束力はないとはいえ、今後もし労基署の定期監督等が入り、自主点検結果の内容と全く違う実態が会社に存在していれば、立ち入り検査に入った監督官の心証は、非常に悪いものになるとほぼ断言できるからです。
5-4 私は平成21年の開業から今回の自主点検内容を強く意識
開業当初から、36協定の特別条項の記載内容等を法律に基づいてきちんと規定してきました。
従いまして、今自主点検を求められても、特段修正する必要もありません。
1ヶ月の時間外・休日労働が100時間を超えなくても(例えば80時間超で)医師の面接指導を会社が実施する旨の任意規定も、開業以来、就業規則の条文として規定してきました。
従業員の健康障害を防止するために重要なため、法的義務はないまでも、会社として積極的に取り組むべきとして、お客さまにお勧めしてきました。
6 まとめ
長時間労働が従業員の健康障害につながりやすいというのは、誰もが認識をしているかと思います。
一方で、当面の企業活動(特に中小企業の場合)を維持するには、長時間労働を今すぐ改善できる状況でもないのも共通の認識かと思います。
この難しい課題を乗り越えていくために、できることからコツコツと、改善への取り組みをしていただくしかないと思っています。
長時間労働の課題取り組みを、全力でサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。