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病者の就業禁止の就業規則規定と実務

新型コロナウイルスに関して、濃厚接触者や感染の疑いがある人に対応する就業規則の規定「病者の就業禁止」と実務を取り上げます。

※在宅勤務が全くできない条件の従業員を前提としています。

※2020年4月24日時点での執筆

1 弊事務所の正社員用就業規則ひな型(病者の就業禁止)

(病者の就業禁止)

第●条   会社は、次の各号のいずれかに該当する社員については、その就業を禁止する。

1     病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者

2     心臓、腎臓、肺等に疾病があり、労働により病状が著しく悪化するおそれのある者

3     前各号に準ずる疾病で、厚生労働大臣が定める疾病にかかった者

4     前各号の他、感染症法等の法令に定める疾病にかかった者

②   前項の規定にかかわらず、会社は、当該社員の心身の状況が業務に適しないと判断した場合、または当該社員に対して、医師、及び国等の公の機関から、外出禁止、あるいは外出自粛の要請があった場合は、その就業を禁止することがある。

③   前二項の就業禁止の期間は、賃金を支給しない。

2 濃厚接触者の場合

従業員本人が新型コロナウイルスに感染している場合は明確ですが、濃厚接触者の場合、どのような就業規則の規定を設けた方が良いでしょうか。

私は、上記(病者の就業禁止)の規定②の「または当該社員に対して、医師、及び国等の公の機関から、外出禁止、あるいは外出自粛の要請があった場合」は就業を禁止し、③で無給とするという規定を設けた方が良いと考えております。

新型コロナウイルスにおいては、濃厚接触者も明確な対応がしやすいと思います。

3 新型コロナウイルスへの感染の疑いがある場合

こちらは、濃厚接触者と違い、悩ましい部分があります。

無給でいくのか、平均賃金の60%の休業手当だけ払うのか、それ以上の賃金を払うのか、そして、どのような場合に無給が法的に通る可能性が高いのか、という悩ましさがあります。

まず、規定としては、上記(病者の就業禁止)の規定②の「前項の規定にかかわらず、会社は、当該社員の心身の状況が業務に適しないと判断した場合」を根拠に就業禁止とし、下記4で述べます一定のルールに基づいて、無給でいくかどうか判断します。

4 感染疑いを無給とするにはハードルをクリアーする必要あり

無給とするには「心身の状況が業務に適しない」ことの立証を会社がしないといけません。

今回の新型コロナウイルスであれば、37.5度以上の発熱の場合、就業禁止とし無給とするという会社のルールが考えられます。

今回は非常事態ですので、37.5度以上の発熱という客観的な線引きをし、出勤前やタイムカード打刻前の体温測定時に37.5度以上の発熱があった場合、その内容を必ず記録化しておき、そのうえで就業禁止とし無給とする、という対応があれば、会社の無給での就業禁止の主張は通ると思われます。

ちなみに、新型コロナウイルス等ではない平常時であれば、無給の就業禁止のハードルは高いと思われます。

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