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有期労働契約が5年以内なら雇止めはできるか?

■1 雇止めの法規制はとどんなものか?

【引用:e-Gov法令検索】

〈該当URL〉

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128


労働契約法
(有期労働契約の更新等)※文字数の関係で、ポイント以外は省略しております。
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当(中略)、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす
一 (略)過去に反復して更新されたことがあるものであって、(中略)期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 (略)合理的な理由があるものであると認められること。

〈厚生労働省解説パンフレット該当URL〉

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet06.pdf


上記の情報が、スパっとしていると思っています。


■2 無期転換と雇止め法理(労働契約法19条)との関係

無期転換ルールは、かなり世の中には浸透してきている気がします。

ただ、無期転換に関する紛争は、今のところ私の耳にはほぼ入ってきていません。

とはいえ、無期転換を回避するため、有期労働契約の通算期間を最長5年以内としている企業は多く存在します。

では、5年以内であれば、企業は必ず雇止め(契約更新しない)ができるかと言いますと、決してそうではありません。

無期転換の規定と雇止めの規定は、全く別物になります。

ですので、上記通算期間が5年以内なら、雇止めが必ずできるということはありません。

あくまで、別々で考えなければならないのです。


■3 雇止め不可とならないためには?

私の肌感覚ですが、有期労働契約の開始から通算して3年以内ぐらいまでがギリギリのような気がします。

1回の契約期間の長さも雇止めの可否の一つの要素にはなってくるかもしれませんが、1年契約を通算3年なら大丈夫、というのはありません。


何を気を付けなければならないかと申しますと、最低限、以下は要注意です。

  • (ア) 採用面接の際、3年を超えるような長期の契約を期待させる言動は行っていないか?

  • (イ) 労働契約書において、契約更新する場合でも、最長3年以内とし、3年を超えることはない、と明記されているか?

  • (ウ) 上記(イ)の締結の際、口頭でもきちんと説明をし、そのうえで本人の真の自由意志で、労働契約書にサインをしているか?

  • →1対1ですと、説明内容を証明しづらいですから、もう1名も契約締結(更新)に同席をし、少なくとも書記係はしてもらい、説明内容を書面で記録化

  • (エ) 3年以内の契約更新の都度、上記(ア)(イ)(ウ)を徹底できているか?

  • (オ) すでに入社している有期労働契約の従業員も、一律で3年以内としているか?

  • →長く会社にいてもらいたい良い人材なら、3年超の有期労働契約を更新するのではなく、正社員登用した方が企業にとっても当該従業員にとってもメリットがあるかと思います。

  • →正社員登用制度を設けるのが、私はベターな選択だと思います。

  • (カ) 入社後に、社長・役員以外の役職者(課長以下でも要注意)であっても、3年超の更新を期待させるような言動をご本人に一切行っていないか?

  • →思わず言ってしまう場合は、それなりにあるように思います。


■4 (ア)から(カ)まで完璧であれば

私個人の見解ではありますが、法的問題に発展する可能性はかなり低いと思います。

しかし、役員まではきちんとリスク管理ができていたとしても、通常の役職者では、いろんな方がいますので、社長等の経営幹部の知らないところで、完璧ではないことが起きている可能性は、それなりにあります。


■5 上記■3がかなり苦しい場合

労働契約は、正規非正規問わず、使用者と労働者との合意で始まります。

ですので、いろんなことがあったとしても、労働契約の終了も合意で終われたら、とても良いことだと思います。

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